データで読み解く!高齢者雇用と予想問題【高齢社会白書等】
高齢者の就業者数は、少子高齢化を背景に増加傾向が続いています。国も高齢者雇用を推進しており、事業主には高年齢者雇用確保措置、高年齢者就業確保措置を求めており、それらの実施状況や就業の状況が時折出題されます。
高齢者の雇用に関するこれまでの出題傾向を分析して、「高年齢者雇用状況等報告」及び「高齢社会白書」に記載されているデータのまとめと予想問題を作成しました。なお、高齢社会白書の扱うテーマは多岐に及ぶため、出題が予想される「就業・所得」に関する内容を中心にまとめました。
試験対策のポイントとして、細かな数字を覚える必要はありません。どのくらいなのかを想像しながら視聴し、大まかな割合や趨勢、トレンドをおさえましょう。違和感のあった内容は特に確認しましょう。
出典:令和7年高年齢者雇用状況等報告
出典:令和8年版高齢社会白書(html版:目次)
令和7年高年齢者雇用状況等報告
高年齢者雇用安定法では、高年齢者の雇用に関して、次の二つの措置を講じることを規定している。
高年齢者雇用確保措置
・雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を目的として、次のいずれかの措置を講じることを事業主に義務付けている。これらを高年齢者雇用確保措置という。
①定年制の廃止
②定年の引上げ
③継続雇用制度の導入
高年齢者就業確保措置
・70歳までの就業機会を確保することを目的として、次のいずれかの措置を講じることを事業主の努力義務としている。これらを高年齢者就業確保措置という。
①定年制の廃止
②定年の引上げ
③継続雇用制度の導入
④業務委託契約を締結する制度の導入
⑤社会貢献事業に従事できる制度の導入
④と⑤については、雇用以外の措置であり、創業支援等措置と呼ばれる。
65歳までの高年齢者雇用確保措置は事業主に課された法的義務であり、70歳までの高年齢者就業確保措置は努力義務である。
65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況
(1)高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は、報告した企業全体の99.9%で、中小企業では99.9%、大企業では99.9%(0.1ポイント減少)であった。
(2)高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の内訳
| 定年制の廃止 | 定年の引上げ | 継続雇用制度の導入 | |
| 全企業 | 3.9% | 31.0% | 65.1% |
| 301人以上 | 0.7% | 22.7% | 76.6% |
| 21人~300人 | 4.2% | 31.6% | 64.2% |
3つの措置のうち、最も割合が高いのは、継続雇用制度の導入である。また、定年制の廃止や定年の引上げは、中小企業と比較すると、大企業では割合が低下する。
70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況
(1)高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は、報告した企業全体の34.8%で、大企業では29.5%であるのに対し、中小企業では35.2%である。
法的義務である雇用確保措置と比較すると、就業確保措置の実施済みの企業の割合は大きく低下し、全体では約3分の1である。また、大企業よりも中小企業の方が実施済企業の割合が高い点に注意が必要である。
(2)高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の内訳
| 定年制の廃止 | 定年の引上げ | 継続雇用制度の導入 | 創業支援等措置 | |
| 全企業 | 3.9% | 2.5% | 28.3% | 0.1% |
| 301人以上 | 0.7% | 0.9% | 27.8% | 0.1% |
| 21~300人 | 4.2% | 2.7% | 28.3% | 0.1% |
大企業と比べて中小企業では、定年制の廃止や定年の引上げといった柔軟な対応がみられる。
この背景としては、大企業では賃金・等級・役職・退職金など人事制度が複雑で、定年制の廃止や定年の引上げによる影響が大きいことなどが考えられる。そのため、既存の定年制度を維持し、継続雇用制度を採用する傾向が強いとみられる。
一方で、中小企業では人手不足や技能承継の課題を背景に、高齢者に引き続き働いてもらう必要性が高いことなども考えられる。実際に、70歳までの就業確保措置の実施割合は、大企業よりも中小企業の方が高い。
令和8年版高齢社会白書 第1章 高齢化の状況
第2節高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得
・令和7年の労働力人口は7,004万人であり、そのうち、65~69歳は403万人、70歳以上は557万人である。労働力人口に占める65歳以上の者の割合は約14%であり、長期的には上昇傾向にある。
・令和7年の65~69歳の労働力人口比率は、半数を超えている(56.1%)。70~74歳では36.7%、75歳以上は12.7%となっており、いずれも上昇傾向である。また、65歳以上の就業率についても、各世代とも上昇傾向にある。
労働力人口比率と就業率の違いは、分子に完全失業者を含むかどうかである。労働力人口比率の分子は就業者と完全失業者であり、就業率の分子は就業者のみである。つまり、働く意思のある人の割合を示すのが労働力人口比率で、実際に働いている人の割合を示すのが就業率である。
・65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると22年連続で前年を上回っている。
・令和7年における65歳以上の就業者を主な産業別に見ると、「卸売業、小売業」が最も多く、次いで「医療、福祉」である。
・令和7年における産業別の65歳以上の就業者を10年前と比較すると、「医療、福祉」が64万人増加し、10年前の約2.1倍となっている。
この資料からは職種の内訳は判明しないが、他の統計資料などを踏まえると、「医療、福祉」産業では、医師、看護師、介護職のほか、事務、調理、清掃、送迎など、多様な仕事に65歳以上の就業者が従事していると考えられる。
・令和7年における各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合を見ると、「農業、林業」が最も高い(50.6%)。
・男女別年齢階層別の就業率
| 60~64歳 | 65~69歳 | 70~74歳 | |
| 男性 | 84.1% | 63.4% | 44.5% |
| 女性 | 65.8% | 46.1% | 28.8% |
65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務付けられていることも背景の一つと考えられ、60~64歳の就業率は特に男性で高くなっている。
・役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の比率
| 55~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | |
| 男性 | 10.5% | 39.8% | 64.9% |
| 女性 | 57.3% | 71.7% | 83.7% |
非正規の職員・従業員の比率は、男性は60歳を境に大幅に上昇しているが、女性は60歳以前から非正規の職員・従業員の比率が高くなっている。
・職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための自己啓発の実施率は、60歳以上の者は令和元年度以降上昇していたが、令和4年度以降低下が続き、令和6年度は約20%である。
・高齢者世帯の平均所得金額(年間)は314.8万円で、その他の世帯(671.0万円)の約5割となっている。また、高齢者世帯の所得階層別分布では、100~150万円が最も多くなっている。
まとめは以上です。
予想問題
問1. 高年齢者雇用安定法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1.65歳までの高年齢者雇用確保措置には、定年の引上げ、定年制の廃止、継続雇用制度の導入がある。
2.65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況として最も多いのは、「定年の引上げ」である。
3.70歳までの高年齢者就業確保措置には、定年の引上げ、定年制の廃止、継続雇用制度の導入のほか、雇用以外の措置(創業支援措置)がある。
4.70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は、報告した企業全体のうち、約3分の1である。
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正答:2
1.○:なお、65歳までの高年齢者雇用確保措置は法的義務である。
2.×:最も多いのは、継続雇用制度の導入である。【P3】
3.○:雇用以外の措置(創業支援措置)には、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」がある。【P1】
4.○:報告した企業全体の34.8%、大企業では29.5%、中小企業では35.2%である。中小企業の方が、大企業よりも割合が高い点に注意する。【P4】
問2.「令和8年版高齢社会白書」に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.70歳~74歳の人口に占める就業者と完全失業者を合わせた割合(労働力人口比率)は、5割を超えている。
2.各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合では、「卸売業、小売業」が最も高い。
3.60歳~64歳の男性の就業率は、8割を超えている。
4.70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は、中小企業よりも大企業の方が高い。
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正答:3
1.×:36.7%であり、5割を超えていない。5割を超えているのは、65歳~69歳の労働力人口比率である(56.1%)。
2.×:各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合が最も高いのは、「農業、林業」である。
3.○:60~64歳の男性の就業率は84.1%であり、8割を超えている。
4.×:大企業は29.5%であるのに対して、中小企業では35.2%であり、中小企業の方が高い。