第12次職業能力開発基本計画(第1部・第2部)のまとめ
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第12次職業能力開発基本計画は全3部から構成されています。
第1部の総説では計画のねらい、第2部では職業能力開発をめぐる経済・社会環境の変化と課題、つまり、現状や問題点が整理されています。そして、第3部では、計画を実現するための具体的な施策が記載されています。
スムーズな内容理解のため、第12次計画で印象的な8つのキーワードを確認してから、内容を見ていきましょう。
| 意味や特徴 | キーワード |
| 少子高齢化と人口減少により、必要な労働力の確保に困難がある状況を示す | 労働供給制約 |
| 新しい職業に就くため、あるいは今の職業で求められるスキルの変化に対応するための学び直しのこと | リスキリング |
| デジタル技術を使って、業務効率化や付加価値向上を図ること | DX(デジタルトランスフォーメーション) |
| 労働者の能力、スキル、経験を「コスト(費用)」ではなく、企業の成長を生み出す「資本」と捉え、投資を行い、最大化することで中長期的な企業や個人の成長に繋げること | 人的資本 |
| 個々の労働者・企業の事情に合わせた職業能力開発を行うことを意味している | 個別化 |
| 一つの企業では行えない職業能力開発を産業・地域等の単位で複数の企業が連携して行うことを意味している | 共同・共有化 |
| 労働市場や企業における職務、スキル、処遇、職業能力開発機会等の可視化を進める | 見える化 |
| 自律的なキャリア形成を支えるインフラとして、労働者個人のみならず、企業や管理者等に対する助言等の伴走支援を行う | キャリアコンサルタント |
第1部 総説
総説では第12次計画のねらいと期間が示されている。
1.計画のねらい(P3)
・日本経済は、緩やかな回復基調となっており、明るい動きがみられる一方で、賃金の伸びが物価の上昇に追いつかず、消費動向に影響している。
・そのため、コストカット型経済から脱却し、成長型経済への移行を確実なものにすることが重要である。
中長期的課題と方向性(P4)
①少子高齢化の進展と人口減少の継続による、必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れることに伴う労働供給制約。
②人工知能(AI)等のデジタル技術の進展により、人間の業務の一部が自動化され、一部の労働需要が減少する可能性。
③地域経済の更なる活性化を図ることが我が国全体の経済成長へ繋がる。
④第11次職業能力開発基本計画で推進した次の施策のさらなる推進。
・新型コロナウイルス感染症の影響等による産業構造の変化や社会全体のデジタル化
・職業人生の長期化・多様化等に対する雇用のセーフティネットとしての公的職業訓練
・企業における人材育成の支援や労働者の自律的・主体的なキャリア形成の支援
これらの方向性を実現するための4つの課題(P5)
①個人、企業による職業能力開発の取組の促進
特に非正規雇用労働者に対する職業能力開発と中小企業における取組への支援。
②労働供給制約等への対応
・労働者の能力向上及び労働力の需給調整機能(労働市場)の整備。
・非正規雇用労働者や中高年労働者、若者、女性、障害者等の労働参加や継続的な能力向上。
・人材不足感が強い現場人材の育成・確保やそのスキルの向上による生産性向上。
③労働者の自律的・主体的なキャリア形成の促進
・労働者が何をしたいかを明確にし、自律的・主体的なキャリアプランの作成、振り返り及び見直しを行い、継続的に能力向上に取り組む。
④デジタル化の進展など産業構造の変化等への対応
・AI技術等、人材ニーズの変化に対応した訓練プログラムの開発、提供等、迅速かつ機動的な対応。
・デジタル技術の開発等を担う高度な専門人材の育成と、労働者全体のデジタルリテラシーの向上を図る。
今後の職業能力開発施策を推進する3つの視点(P7)

①個々の労働者・企業の事情に合わせた職業能力開発を行う「個別化」
②産業・地域等の単位で、職業能力開発を複数の企業が連携して行う「共同・共有化」
③労働市場、企業における職務やスキル、処遇、職業能力開発機会の可視化を進める「見える化」
2.計画の期間
令和8年度から令和12年度までの5年間
第2部 職業能力開発をめぐる経済・社会環境の変化と課題
第2部では、労働市場、労働需要側、労働供給側の点から変化と課題を確認する。
1 近年の労働市場の変化と課題(P8)
・雇用情勢は緩やかに持ち直している。
| 令和2年 | 令和6年 | |
| 完全失業率 | 2.8% | 2.5% |
| 有効求人倍率 | 1.18倍 | 1.25倍 |
計画資料に記載はないが、コロナ禍前の令和元年(2019年)の完全失業率は2.4%、有効求人倍率は1.60倍でその水準にはまだ戻っていない点には注意する。
・人材不足感については、製造業、非製造業ともに不足とする企業が過剰とする企業を上回っており、特に中小企業の人材不足感が強い。
・就業者数は、2040年にかけて全体として減少するものの、その変化は産業によって大きく異なり、「医療・福祉」等では増加が見込まれる一方で、「運輸業」、「飲食店・宿泊業」、「生活関連サービス業」等では減少が見込まれている。
・名目賃金は令和3年以降増加に転じている一方で、実質賃金は物価上昇等の影響によりマイナスとなっている。
・多くの職種では能力の向上や経験の蓄積等に応じて賃金上昇がみられるが、「サービス職業従事者」、「保安職業従事者」等、20歳代後半から50歳代後半にかけてそれがみられないものもある。
・日本の時間当たりの労働生産性をみると、OECD諸国の中でも低位となっている。
2.労働需要側の構造的な変化と課題(P10)
・AIの進化や業務のデジタル化等の動きを背景に、労働需要において構造的な変化がみられる。
・長期的な産業構造の変化では、農林漁業等の第一次産業、建設業や製造業等の第二次産業から、サービス業等の第三次産業へと比重が移ってきている。
・労働供給は、人口減少に伴って減少するものの、AI・ロボットの活用促進や、リスキリング等による労働の質の向上により大きな不足は生じない。
・一方で職種間、学歴間でミスマッチが発生するリスクがあり、戦略的な人材育成や円滑な労働移動の推進が必要となる。
・高度な分析スキルを要する非定型分析タスクや高度な対人スキルを要する非定型相互タスクが増加する一方で、定型手仕事のタスクが減少している。
一方、非定型「相互」タスクは、高度な対人コミュニケーション能力、交渉力、リーダーシップが求められる、定型化できない人間関係の調整業務のことである。
・日本企業の人的投資(OJTを除くOFF-JTの研修費用等)は、他の先進国と比べて低い水準にある。
・計画的なOJT及びOFF-JTの実施率はコロナ禍で低下し、正規雇用労働者は、回復傾向だが過去の水準には届いていない。
・計画的なOJT及びOFF-JTいずれも、正規雇用労働者と比べて、正規雇用労働者以外の労働者に対する実施率が大きく下回っている。
3.労働供給側の構造的な変化と課題(P12)
・地方を中心に人口の減少傾向が続き、労働供給制約が強まる。
・一人ひとりの労働者の労働参加と労働生産性を高めていく。
・男女別の労働力率の推移をみると、男性の労働力率は横ばいの一方で、女性や高年齢者の労働力は上昇し、労働参加が進んでいる。
・就業者数と労働時間を乗じて算出した労働力供給量は、長期的に減少傾向で推移しているが、近年は女性や高齢者の就業者数が大きく増加したことで、横ばいで推移している。
・就業者数は2030年までは横ばいで推移し、その後減少に転じ、就業者の年齢構成は60歳以上の割合が増加していくことが見込まれている。
・労働者の平均勤続年数をみると、男女ともに長期化する傾向があるが、転職者数は緩やかに増加する傾向にある。
・「より良い条件の仕事を探す」目的の転職が増加している。
・正規雇用労働者は、女性を中心に増加傾向で推移している。
・非正規雇用労働者は、女性や高年齢層を中心に長期的には増加傾向にあるものの、近年は横ばいであり、女性の正規雇用労働者数と非正規雇用労働者数の差が縮小傾向にある。
・若年層のフリーター数は、平成15年(217万人)をピークに、長期的に減少傾向にあったものの、近年は130万人台で推移している。

出典:若年者雇用対策の現状について(厚生労働省)
・ニート(若年無業者)数は、令和4年以降、増加傾向にある(令和6年、61万人)。

出典:若年者雇用対策の現状について(厚生労働省)
第1部、第2部のまとめは以上です。第3部のまとめへ進みましょう。