経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会報告書【まとめと予想問題】
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今回のテーマは、「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会報告書」です。
こうしたキャリアコンサルティングの現状や方向性を示す資料は、今後、各試験で出題される可能性があります。また、実務的にも重要です。どうぞご一読、ご視聴ください。また、予想問題を3問用意しています。知識の確認にご活用ください。
経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会報告書![]()
1.はじめに(P1)
・2016年4月にキャリアコンサルタント登録制度が創設されてから10年近くが経過し、2025年3月末には国家資格登録者数が約8万人に達した。この間、産業構造・就業構造の変化、技術革新、働き方の多様化など、経済社会情勢は大きく変化している。
・個人には、自らキャリアを築き上げることが一層求められ、企業にも人的資本投資を含む生産性向上に向けた戦略的な取組が必要となっている。
・職業能力開発促進法の基本理念を踏まえ、キャリアコンサルティングにも、経済社会情勢の変化に対応した支援が求められる。
・本研究会では、主に次の3点について検討した。
①経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングに必要な能力
②キャリアコンサルタントがその能力を身につけるための制度・施策
③キャリアコンサルティングの活用活性化のために有効な施策
2.キャリアコンサルティングをとりまく状況(P1)
・少子高齢化に伴い、高齢者や女性の就業割合が増加するなど、就業構造が変化している。
・仕事に対する価値観や生活スタイルが多様化し、職業人生も長期化していることから、労働者のキャリアや働き方も多様化している。
・企業には、人材の最適配置やエンゲージメント向上、生産性向上を実現するため、自律的人材の育成が求められている。
エンゲージメントとは、従業員が仕事や組織に対して主体的かつ前向きに関わろうとする度合いを示し、意欲や貢献意識が高い状態は、生産性の向上や人材の定着にもつながるとされる。
・DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI等の技術革新により、産業・職業ごとの労働需要や、必要とされる知識・技能も急速に変化している。
・このような環境では、労働者自身がキャリアの方向性を考え、継続的に能力開発に取り組み、環境変化に能動的に対応する「自律的・主体的なキャリア形成」が重要となる。
・キャリアコンサルタントには、経済社会情勢の変化を踏まえた支援能力と、企業、需給調整、教育、地域・福祉など、それぞれの活動領域に応じた専門性が求められる。
3.今後のキャリアコンサルティングに必要な能力(P2)
(1)検討にあたっての考え方
・従来の「キャリアコンサルティング実施のために必要な能力要件」に加え、今後追加・強化すべき能力を整理した。
・今後追加・強化すべき能力の検討は、次の2つの観点から行っている。
①すべてのキャリアコンサルタントに共通して追加・強化すべき能力
②活動領域ごとに特に必要となる専門的能力
自らが活動する領域だけでなく、他領域の能力についても学び、領域横断的な連携に備えることが重要である。
(2)すべての領域において共通に追加・強化が必要な能力
「開発型」の支援
・課題を抱える相談者の問題を解決する「解決型」の支援だけでなく、相談者が将来ありたい姿を自ら設定し、その実現に必要な職業選択や能力開発に取り組めるようにする「開発型」の支援が求められる。
・最終的には、相談者自身がキャリアを形成する力、自らを継続的に高める力を身につけることを目指す。
自己理解・仕事理解・環境理解の支援
・AI等の技術革新、労働需要、労働条件、働き方の変化など、将来予測を含む最新情報を活用する。
・行政データ、研究機関の調査、現場の実践知など、信頼できる情報を収集・分析し、相談者に適切に提供する。
・AI等のデジタルツールを用いた情報取得について、相談者へ助言することも求められる。
・キャリア・シートやアセスメントツール、キャリア研修、グループアプローチ等を活用し、自己理解を促す。
職業生活設計に関する支援
・相談者が自己理解・仕事理解・環境理解を踏まえ、自らの課題を把握し、能力開発や職業選択について計画できるよう支援する。
・育児・介護と仕事を両立する者、中高年齢者など、多様な属性や生活スタイルを踏まえた支援が必要である。
・労働関係法令、社会保障制度、各種支援制度に関する知識も求められる。
職業選択・能力開発に関する支援
・職業選択では、短期的な就職だけでなく、長期的なキャリア形成に資する選択を支援する。
・求人・求職状況や労働条件等の情報を示しつつ、相談者自身が選択基準を明確にし、主体的に意思決定できるようにする。
・応募書類や面接対策だけでなく、不安や迷いを受け止める心理面の支援も必要である。
・能力開発では、教育訓練や自己啓発、支援制度の情報提供に加え、動機づけや進捗確認などの伴走的支援が重要となる。
組織・環境への働きかけと専門家との連携
・1対1のキャリアコンサルティングによる支援だけでなく、組織や環境、社会への働きかけを行うアドボカシー支援も必要となる。
・他領域のキャリアコンサルタントや他職種の専門家と連携し、必要に応じて適切にリファー(紹介)する能力が求められる。
AI等のデジタルツールの活用
・AI等を情報収集・分析に活用する能力に加え、提示された情報の正確性・妥当性を見極める能力が必要である。
・倫理上の問題に配慮しながら、キャリアコンサルティングの質を高める支援ツールとして活用することが求められる。
(3)企業領域において追加・強化が必要な能力(P6)
・従業員への直接支援だけでなく、企業に対して自律的・主体的なキャリア形成の重要性を理解してもらい、支援環境を整備する役割が重要となる。
・従業員の主体性、能力、エンゲージメントの向上が、生産性向上や人材定着につながることを、データや理論的根拠を用いて説明する。
・セルフ・キャリアドックの導入のメリットを企業に伝え、導入・活用に向けた働きかけを行う。
・経営課題と人材戦略の関係を整理し、客観的なデータや事例を用いて経営層の意思決定を支援する。
・経営層や人事部門と連携し、人材育成、配置、能力開発、職場風土等に関する施策を企画・実施する。
・個別面談から得た情報を組織課題の改善につなげる。
・ジョブ・クラフティングの考え方を活用し、従業員が仕事や役割を主体的に捉え直す支援を行う。
ジョブ・クラフティングとは、業務や役割を主体的に捉え直すことをいい、レズネスキーとダットンが提唱した。ジョブ・クラフティングには、仕事の内容ややり方を工夫する「タスク・クラフティング」、職場での人との関わり方を変える「関係性クラフティング」、仕事の意味や捉え方を変える「認知的クラフティング」の3つの視点がある。
(4)需給調整領域において追加・強化が必要な能力(P8)
・職業紹介や労働者派遣に関する法制度を理解し、労働市場や職種に関する最新情報を活用して支援する。
・求職者の職務経験、知識・技能、職業興味、価値観を把握し、求人職種との適切なマッチングを行う。
・必要に応じて、求職者の希望条件の見直しや、求人者に対する採用条件の再設定の働きかけを行う。
・ハローワークでは、必要な者に職業訓練の受講を提案する能力が求められる。
・労働者派遣事業者では、派遣労働者のキャリアアップ、教育訓練計画、キャリアパス、資格取得等に関する支援が必要となる。
(5)教育領域において追加・強化が必要な能力(P9)
・学生・生徒のキャリア教育、就職支援、インターンシップ、学内カリキュラムへの協力、社会人向けリカレント教育など、総合的な支援が求められる。
・学生・生徒が自己理解を深め、社会が変化しても主体的に選択・決定し、生涯にわたり能力開発に取り組み、自律的・主体的なキャリア形成に取り組んでいけるよう支援する。
・企業や学内関係者と連携し、キャリア教育プログラムを設計・実施する。
・社会人向けのリカレント教育においては、受講者の希望に応じ、キャリアコンサルティングを行うことも、役割として求められる。
(6)地域・福祉領域において追加・強化が必要な能力(P11)
・地域若者サポートステーション、生活困窮者支援機関、福祉施設、障害者支援施設、女性センター等で、手厚い支援を必要とする者に、相談者ひとりひとりに寄り添った支援を行う。
・本人や本人を取り巻く環境について丁寧な情報収集とアセスメントを行うとともに、家族や関係支援機関等からも必要な情報を収集する。
・課題を把握した上で、支援の必要性を説明し、解決に向けた方向性を提案する。
・セミナー、グループワーク、企業見学、職場体験等の支援プログラムを企画・運営する。
・キャリアプランの作成、教育訓練、就職活動、就職後の職場定着まで伴走的に支援する。
4.キャリアコンサルタントの能力開発の促進(P12)
(1)自発的な学びの促進(P12)
・自身の活動領域や将来目指す姿を踏まえ、更新講習や自己研鑽に計画的に取り組むことが求められる。
・自分の領域だけでなく、他領域で求められる能力も学ぶことで、領域横断的な連携や支援の質向上につながる。
(2)今後のさらなる検討(P13)
・本研究会で整理した能力について、今後は、それを身につけるために必要な知識・技能を具体化し、体系的に整理する必要がある。
・現場の実態に即して、必要に応じて能力の整理自体も見直すことが求められる。
(3)実践的な学びの機会の提供(P13)
・更新講習や自己研鑽に加え、実践を通じた学びが重要である。
・有効な方法として、以下が挙げられる。
①経験豊富なキャリアコンサルタントの指導の下でのインターンシップ
②個別事例を検討する事例検討会
③スーパービジョン
スーパービジョンは、指導者が個々の成長課題に応じて教育的介入を行うもので、知識・技能や実践力の向上に有効である。
5.キャリアコンサルティングの活用促進(P14)
・キャリアコンサルタントの活動の場は、企業が約4割で最も多く、需給調整機関が約2割、学校等の教育機関が約2割、地域の各種支援機関が約1割である。
・2025年3月末時点で登録者は約8万人に達しているが、約3割はキャリアコンサルティングに関連する活動を行っていない。
・「キャリアコンサルティングを行う仕組みがない」とする事業所も約5割となっている。
・一方、正社員では6割弱、正社員以外では4割弱の労働者が、キャリアコンサルタントによる相談の利用を希望しており、制度や効果への認知不足、相談機会の少なさが活用の障壁となっている。
・今後は、キャリア形成やリ・スキリングの重要性、キャリアコンサルティングの効果について、国民・企業・学校・業界団体等の理解を促す必要がある。
・具体的な活用事例を示すほか、キャリア自律度やエンゲージメントスコア等の指標を用いて成果を可視化・定量化することも有効である。
・全国の労働者が、雇用形態や就業状況にかかわらず、質の高いキャリアコンサルティングを受けられる機会を確保することが重要である。
・ITなど特定分野の専門性を持つ者がキャリアコンサルタント資格を取得し、活躍することも、支援の質の向上につながることが期待される。
6.おわりに(P15)
・経済社会情勢が大きく変化する中、自律的・主体的なキャリア形成と、それを支援するキャリアコンサルティングの重要性は高まっている一方で、社会全体の理解はまだ十分ではない。
・国による周知に加え、現場のキャリアコンサルタント自身が、相談者への質の高い支援だけでなく、組織や環境への働きかけを行うことが重要である。
・今後、キャリアコンサルタントには、継続的な能力開発、領域横断的な連携、社会への働きかけを含め、これまで以上に大きな役割が期待されている。
予想問題(全3問)
問1.今後のキャリアコンサルティングにおいて、すべての領域に共通して追加・強化が必要な能力に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.キャリアコンサルタントは、相談者が抱える現在の問題を解決する「解決型」の支援を中心とし、将来のキャリア形成については相談者自身の判断に委ねることが望ましい。
2.キャリアコンサルタントは、相談者が将来ありたい姿を自ら設定し、その実現に必要な職業・職務の選択や能力開発上の課題を明らかにし、自らキャリアを形成する力を身につけられるよう支援することが求められる。
3.AI等のデジタルツールを活用する場合、その情報の正確性についてはツールの提供者が責任を負うため、キャリアコンサルタントが妥当性を判断する必要はない。
4.相談者の職業選択を支援する際には、最新の求人情報を提供して早期就職を促進することを最優先とし、長期的なキャリア形成については考慮しない。
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正答:2
1.×:「解決型」の支援だけでなく、相談者が自らキャリアを形成する力を身につけることを支援する「開発型」の支援が求められている。【P3】
2.○:報告書では、相談者が目指す姿を自ら設定し、その実現に必要な職業・職務の選択や能力開発等の課題を明らかにして、自律的・主体的なキャリア形成に取り組めるよう支援することが示されている。【P3】
3.×:AIが提示する情報について、キャリアコンサルタントには正確性や妥当性を見極める能力が求められている。【P5】
4.×:職業選択の支援では、将来予測を含む最新情報を踏まえ、長期的なキャリア形成に資する選択が行われるよう支援する必要がある。【P4】
問2.キャリアコンサルタントの活動領域別に追加・強化が必要な能力に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.企業領域では、従業員への直接的な支援に加えて、自律的・主体的なキャリア形成が生産性向上や人材定着に寄与することについて、企業の理解を促すことが求められる。
2.需給調整領域では、求職者の職務経験や知識・技能、職業興味、価値観等を踏まえて求人職種とのマッチングを行い、必要に応じて求人者に採用条件の再設定を働きかけることも求められる。
3.教育領域では、学生・生徒の就職支援が主な役割であるため、キャリア教育やインターンシップ、学内のカリキュラム設計への協力は、キャリアコンサルタントの役割には含まれない。
4.地域・福祉領域では、相談者本人だけでなく、家族や関係支援機関等とも関係を構築し、キャリア発達の支援に必要な情報を収集する能力が求められる。
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正答:3
1.○:企業領域では、従業員の自律的・主体的なキャリア形成が、主体性や能力、エンゲージメント、生産性、人材定着につながることを企業に理解してもらう働きかけが求められる。【P6】
2.○:需給調整領域では、求職者と求人職種の適切なマッチングに加え、必要に応じて求職者への助言や求人者への採用条件の再設定の働きかけも求められる。 【P8】
3.×:教育領域では、就職支援だけでなく、キャリア教育、インターンシップ、学内のカリキュラム設計への協力、社会人向けリカレント教育など、総合的な支援が求められている。【P10】
4.○:地域・福祉領域では、本人や本人を取り巻く環境について丁寧に情報収集するとともに、家族や関係支援機関等とも関係を構築し、必要な情報を収集することが求められる。【P11】
問3.キャリアコンサルティングに関連する用語について、次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.アドボカシーとは、労働者が雇用される力、または雇用され続ける力を指し、知識・技能・職業能力だけでなく、経験や適応力、対人能力などを含めた、労働市場での就業可能性を表す概念である。
2.エンゲージメントとは、個人への支援だけでは解決しにくい課題に対し、組織・環境・社会に働きかけ、キャリア形成を促進する環境の整備や支援の充実を図る取組である。
3.エンプロイアビリティとは、将来の職業上の課題や転機、予期せぬ変化に対して、自ら準備し、柔軟に対応しながらキャリアを形成していくための心理的・社会的な適応力のことである。
4.ジョブ・クラフティングとは、従業員が仕事のやり方や周囲との関わり方、仕事の捉え方を自ら工夫し、業務や役割を主体的に捉え直すことをいう。
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正答:4
1.×:これはエンプロイアビリティの内容である。
アドボカシー支援とは、労働者のキャリア形成を促進する環境の整備や、手厚い支援が必要な者への支援の強化に向けて、組織や環境、社会に働きかける支援である。
2.×:これはアドボカシー(支援)の内容である。
エンゲージメントは、従業員が仕事や組織に対して主体的かつ前向きに関わろうとする度合いを指す。
3.×:これはキャリア・アダプタビリティの内容である。なお、キャリア・アダプタビリティはサビカスのキャリア構築理論の中核概念である。
エンプロイアビリティは、労働者が雇用される力、または雇用され続ける力を指す。
4.○:ジョブ・クラフティングは、従業員自身が仕事のやり方、周囲との関わり方、仕事の意味づけなどを工夫し、仕事や役割を主体的に捉え直す考え方で、レズネスキーとダットンが提唱した。
なお、ジョブ・クラフティングは、仕事の内容ややり方を工夫する「タスク・クラフティング」、職場での人との関わり方を変える「関係性クラフティング」、仕事の意味や捉え方を変える「認知的クラフティング」の3つに整理できる。