今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書の要約とまとめ

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「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会報告書」は、日本の労働市場が直面している構造的な課題と、それへの対策を網羅的に考察している資料です。

2026年に改訂が予定されている、第12次職業能力開発基本計画のベースになるのではないかと、みん合では捉えています。

この資料で示された課題や方向性、施策からの出題も十分にあり得ると考えていますが、ボリュームがある資料のため、全体の要約、そして詳細内容のまとめを制作しました。

資料の要約

この資料では、AIの進化、デジタル化、労働供給制約といった構造的変化に直面する日本の労働市場において、今後の人材開発政策が取るべき方向性を包括的に分析・提言している。

現状認識として、日本の企業の人的投資は国際的に低水準にあり、特に中小企業や非正規雇用労働者への人材開発機会が乏しい実態が指摘されている。また、個人の自己啓発も伸び悩み、キャリア形成に課題を抱える労働者が多い。

これらの課題に対応するため、本報告書は、個人、企業、経済社会が持続的に発展する社会の実現を目指し、政策の基本理念として以下の3つの「視点」を提示している。

1. 個別化=個々の労働者や企業の事情に合わせた伴走型の支援を提供する。
2. 共同・共有化= 一企業では困難な人材開発を、産業や地域単位で連携して行う。
3. 見える化=労働市場における職務、スキル、処遇、人材開発機会の情報を透明化し、個人と企業の合理的な意思決定を促す。

この3つの視点に基づいた具体的な政策の方向性として、以下をあげている。

①労働市場におけるスキルの標準化と企業の人的資本情報開示による「見える化」の促進
キャリアコンサルティングの充実や経済的支援を通じた個人の自律的キャリア形成支援
③中小企業への伴走型支援や、産業単位での共同訓練を軸とした企業の人材開発支援
非正規雇用労働者、中高年、若者など多様な労働者層に応じたきめ細やかな支援策の展開を提言する。

これらの施策を通じて、労働者のスキル向上と適職選択を促し、企業の生産性向上と持続的成長を実現することを目指している。

以下では、資料の詳細をまとめています。

Ⅰ. 労働市場と人材開発政策を巡る現状認識

(1)労働市場を巡る現状認識

・「総労働力供給」は1990年代以降、緩やかな減少傾向が続き、今後、就業者数は2030年まで横ばいで推移後、減少に転じ、就業者の高齢化が見込まれる。

・女性や高齢者の就業が進み、非正規雇用労働者が増加している。選択理由は「自分の都合の良い時間に働きたい」「家事・育児・介護と両立しやすい」などが多い。

ワーク・ライフ・バランスへのニーズが高まっており、会社や仕事のことよりも自分や家庭のことを優先したい」という価値観が強まり、収入が減っても勤務時間の短さを望む傾向が見られる。

・人材不足感は、特に中小企業で顕著である。2040年にかけて「医療・福祉」分野で就業者増が見込まれる一方、「運輸業」「飲食店・宿泊業」等では減少が予測され、産業間のミスマッチが懸念される。

・近年、非定型分析タスク・非定型相互タスクが増加する一方で、定型手仕事のタスクが減少している。

・名目賃金は2021年以降、増加に転じているが、物価上昇により実質賃金は減少している。

・日本の時間あたり労働生産性はOECD加盟38か国中29位と低迷している。

・日本のDXへの取組は米国と比較して遅れており、特に中小企業でその傾向が顕著である。

(2)人材開発を巡る現状認識

・日本の企業の人的投資は、他の先進国と比べて低い水準にある・

・計画的OJTおよびOFF-JTの実施率は、コロナ禍で低下後、回復が遅れており、特に非正規雇用労働者での落ち込みが大きい。

・企業規模が大きいほどOJT・OFF-JTの実施率は高く、中小企業の人材開発は低調である。

・正社員と非正規雇用労働者の間での能力開発機会の差が拡大している懸念がある。

・人材育成に問題があるとする事業所は約8割にのぼり、主な理由として「指導する人材が不足している」「人材を育成しても離職してしまう」などがある。

・自己啓発を実施している労働者の割合は、正社員で44.1%、正社員以外で16.7%に留まり、概ね横ばいで推移している。

・自己啓発の障害として、時間的制約のほか、「自分の目指すべきキャリアがわからない」といったキャリア形成上の問題も挙げられている。

Ⅱ. 人材開発政策により目指すべき社会の姿

(1)人材開発政策により目指すべき社会の姿

今後の人材開発政策では、個人、企業、経済社会のそれぞれの観点から、以下の社会像を目指す。

①個人は職業人生を通じて自律的にキャリアプランを描き、スキル向上に取り組むことで、自己実現と処遇向上を達成する。
②企業は、 人材開発への積極投資を通じて労働生産性を高め、その成果を処遇やさらなる人材開発に還元することで継続的に発展する。
③経済社会においては、労働者が能力を高め、その能力を最大限発揮できる仕事に就ける需給調整メカニズムを通じて発展する。

(2)実現するための課題

上記の社会像を実現するためには、以下の4つの課題に対応する必要がある。

①企業・労働者による人材開発の取組促進
国際的に見て低調な企業の人材開発投資と個人の自己啓発を活性化させる。特に非正規雇用労働者と中小企業への対応が急務である。

②労働供給制約への対応
労働者の能力向上と、人材の需給調整機能を持つ労働市場の整備を進める。高齢者や非正規雇用労働者などの一層の戦力化が重要となる。

③労働者の自律的・主体的キャリア形成の促進
労働者が自らのキャリアプランを策定・見直し、能力向上に取り組めるよう、情報提供や相談体制を充実させる。

④デジタル技術の進展等による産業構造等の変化への対応
AIやDXといった市場の新たな人材ニーズに応える訓練プログラムを開発・提供し、労働者全体のデジタルリテラシーを向上させる。

(3)これからの人材開発政策を考えるにあたって重要な3つの「視点」

これからの人材開発政策を検討する上で、以下の3つの視点を持つことが極めて重要である。

個別化 個々の労働者・企業の事情に合わせた人材開発を行う
共同・共有化 産業・地域等の単位で複数の企業が連携して人材開発を行う
見える化 労働市場及び企業における職務・スキル・処遇・人材開発の見える化を進めることにより企業や個人の人材開発を促進する

Ⅲ. 人材開発政策の具体的方向性

(1)労働市場でのスキル等の見える化の促進

労働供給制約が強まる中で、働く意欲を持つ労働者が、それぞれの事情に応じて働き方や職業を選択し、労働に参加できる環境を整備する。

①労働市場におけるスキルの標準化と見える化

・労働者が自律的にキャリアを選択できる基盤を構築するため、情報インフラの整備が不可欠である。

職業情報提供サイト(job tag)において、職務内容、キャリアパス、求められるスキル、賃金等の情報提供を充実させる。

・職業能力評価制度や、企業横断的な技能検定、企業内の認定社内検定、業界単位の団体等検定の活用を推進し、スキルの客観的な評価基盤を強化する。

・職業能力評価基準を企業が活用し、自社の事情に合わせた社内版スキル標準を作成できるよう支援する。

②企業の人材開発に関する情報の発信等

・大企業に義務化された有価証券報告書での人的資本開示に加え、労働者がキャリアを考える上で参考となる、より詳細な人材開発情報の開示・発信を企業に促す。

・人材開発への取組が、離職抑制や意欲の高い人材の確保につながるというメリットを企業に啓発する。

(2)個人のキャリア形成と能力開発支援の充実

個人が自律的に能力開発を進め、その能力を最大限に発揮することを可能とすることは、社会全体の活力を高める上で望ましい。

①キャリア意識の醸成とキャリア形成支援

・若年層を中心にキャリアビジョンを考えたことがない者が多い現状を踏まえ、個々人が「Will(何をしたいか)」「Can(何ができるか)」「Must(何が必要か)」を考える機会を提供する。

・上司による1on1ミーティングの質向上を支援するとともに、専門家であるキャリアコンサルタントが上司をサポートする体制を企業内に構築するよう促す。

・キャリアコンサルタントは職場の管理者を支援する上で求められる専門性を高める必要がある。

・20 代、30 代のキャリアコンサルタントは少なく、若年層に対するキャリアコンサルタント資格の取得促進が必要になる。

・キャリアコンサルタントの専門分野や経験を可視化し、個人が社外でも気軽に相談できる環境を整える。

・日本は諸外国と比べて、キャリアの助言や支援をしてくれる人間関係をもつ労働者が少ない。

②個人の能力開発支援

・自己啓発を行う労働者は34.4%にとどまり多いとは言い難い現状である。

・労働者が離職せずに訓練に専念できるよう、雇用保険の教育訓練休暇給付金(令和7年10月施行)などの制度を周知・活用する。

・教育訓練給付金の対象講座を拡充し、労働者の主体的な学びを後押しする。

(3)企業の人材開発への支援の充実

労働供給制約が強まり、企業の人材確保が難しくなる中で、従業員のスキルの向上を図り、労働生産性を向上させていくことがこれまで以上に重要になっている。

①人材開発の質を高める環境整備

・人材確保が難しくなる中で、企業は従業員のスキルの向上や、DX による業務効率化を図ることを通じて労働生産性を向上させる。

・企業が効果的な人材開発を行うためには、事業内職業能力開発計画職業能力開発推進者を普及・機能させていくことが重要である。

・JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)では、生産性向上支援訓練を実施する中で、人材開発の計画段階から実行まで伴走支援を行っている。

・企業の人材開発計画の作成や周辺の仕組みの整備等の面から伴走支援する専門人材の育成が重要であり、キャリアコンサルタントが今後その専門人材の候補として考えられる。

・キャリア面談とキャリア研修などを組み合わせて従業員の主体的なキャリア形成への取組みを行う「セルフ・キャリアドック」への取り組みを一層普及させていく。

②デジタル技術の活用による労働生産性の向上と個人の能力の最大化

・AI 等のデジタル技術を活用することでタスクの精度の向上や効率化を図り、DX の導入等により作業の省力化を進めて時間を生み出し、人材開発やDX 等による効率化に適さない業務に充てることで生産性を高める。

・特に中小企業が課題とするDX推進人材の育成を支援する。経営者層への啓発や、従業員全体のITリテラシー向上のための研修実施を促す。

・DX のメリットに対する従業員の理解を促すことや、従業員全体のIT リテラシーを高めることも重要である。

・日本企業は米国企業と比べて従業員全体のIT リテラシーを把握し、その改善のための研修を実施する割合が低い

③中小企業に対する人材育成の支援

・企業規模別にOFF JT 、計画的OJT の実施率を見ていくと、大企業と比べ、中小企業の人材開発への取組は低調である。

・中小企業は人材育成に取組むにあたって、離職率が高いことに加えて人材開発の専任者がいないことが多いため人材開発に計画的に取組むことが難しい。

・中小企業の経営方針に基づいて人材育成の計画を策定し実施できるよう、専門家が中小企業に対して「個別化」された伴走型支援を行うことが効果的である。

・中小企業は、1社では人材開発に十分対応することが難しいことも想定されるため、産業・地域等の単位で複数の企業が集まり「共同・共有化」した人材育成を促し支援する。

(4)人材開発機会の拡大、技能の振興

労働市場や企業内でのスキル等の「見える化」と合わせ、AI など技術の進展や、労働力需給の状況等を踏まえつつ、職業訓練機会の充実が図られることが重要である。

①人材開発機会の充実

・労働者にとっての主要な人材開発機会として、企業が提供するOJT とOFF-JTの機会、公的機関等が提供する公共職業訓練など人材開発機会、労働者が自ら学ぶ自己啓発の機会がある。

・労働者が働きながら、スキルの向上を図ることが重要となっているため、在職者の能力開発を支援するための方策の検討を進めていくべきである。

・実習機会や就労機会を組み込んだ訓練は、積極的な労働市場政策として効果が大きいことが実証分析でも明らかにされているが、我が国では普及が進んでいない。

・中小企業は単独では人材開発に十分対応することが困難であり、人材ニーズが重なる産業・地域等の単位で複数の企業が集まり「共同」で人材育成に取組み、リソースを「共有化」していく仕組みを作ることが重要である。

・事業主の団体やその連合体、職業訓練法人等が職業訓練を行う場合に、都道府県知事が認定を行う認定職業訓練の仕組みがある。

・労働者に対するマンツーマンのコーチングやフォローを行うことで職業訓練効果が高まることが実証分析で明らかにされている。

②民間教育訓練機関が提供する訓練機会の充実と質の確保

・日本の職業訓練の提供体制において、民間教育訓練機関は大きな役割を担っており、公共職業訓練のうち約7~8割程度は民間教育訓練機関が実施を担っている。

③技能五輪国際大会を契機とした技能の振興

・2028 年の技能五輪国際大会の開催地が日本・愛知県に決定したところであり、中学・高校生の段階から技能を尊重する機運を醸成するとともに、技能労働者のスキル向上に向けた取組の強化を進めるべきである。

Ⅳ.多様な労働者の人材開発策

労働供給制約が強まる中では、労働参加を進め就業者一人一人がスキルを向上させてその持てる力を発揮し、生産性を向上させ、ひいては処遇改善を実現していくことが一層重要となっている。

①非正規雇用労働者への支援

・正社員との能力開発機会の格差を是正するため、公的職業訓練での支援を強化する。

・非正規雇用労働者については、家事・育児等との両立がしやすいよう、オンライン訓練の全国展開を検討する。

②中高年労働者への支援

・65 歳以上の就業率が上昇しており、今後、就業者の年齢構成のうち60 歳以上の割合が増加していくことが見込まれている。

・中高年労働者は、若年層と比べてOJT 、OFF-JT の機会が乏しいこと、デジタル化など時代の変化への対応が求められる。

・OJT とOFF-JT を組み合わせたデュアル訓練など、実務経験を組み込んだ訓練は高い効果が期待される。

・高齢期においては健康や家庭状況に応じて働き方の多様化が進むことに加え、職業を転換していく機会が増えることが想定される。

③若者への支援

・学生等の時期からの職業意識やキャリア形成意識の醸成が重要と考えられ、国、学校が連携し、在学段階からキャリアについて相談する機会を増やす。

・若者の育成に積極的な企業を認定するユースエール認定制度の活用を促進する。

・不登校経験者など就労に困難を抱える若者に対し、専門家や多様な主体と連携した、アウトリーチ(手を差し伸べる形)を含めた支援を強化する。

④現場人材のスキル向上と人材確保のための環境整備

・人材不足が深刻な現場人材について、スキルの標準化・見える化を通じて処遇改善につなげ、仕事の魅力を高める。

・デジタル技術を有する人材を活用して業務効率化・省人化を図ることの両者に戦略的に取り組む。

まとめは以上です。