令和7年版労働経済の分析第1部ダイジェスト
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労働経済の分析は、厚生労働省が原則として毎年、作成公表しており、キャリアコンサルタント試験では、ほぼ毎回出題されている、最頻出資料です。なお、同じ回で2問出題されることも珍しくありません。
「労働経済の分析」のボリュームは膨大で、精読は困難ですから、通読、流し読み、斜め読みでも良いですが、その場合には本文前に記載されている、「見出し」に注目し、その内容で違和感のあるもの、気になった内容を、じっくり読む方法がおすすめです。
いやいや、元の資料はなるべく読まずに済ませたい…、という方は(多いと思いますが)、このダイジェストも見出しの内容を中心にまとめていますので、ダイジェストを一読(一聴き)して「え、そうなの?」と思ったことを中心に確認するのもよいでしょう。
また、これまでと比べて「増加、減少、上昇、下降」などのトレンド(趨勢)が特に出題されます。一方で細かな数字は、ほぼ出題されていませんから、それらを暗記しようとは思わず、「半数を超えている」や「○割程度」と大掴みで印象付けをしましょう。気になる点については随時、解説します。
これまでの労働経済の分析に関する出題傾向をみると、完全失業率や有効求人倍率などの雇用指標などのデータがまとめられている「第Ⅰ部」からは、雇用指標や雇用の趨勢に関する出題が1問され、特定のテーマを元にまとめられている「第Ⅱ部」から、1問出題されるケースがこれまでに何度かあります。
なお、第Ⅱ部のテーマは毎年異なるため、年版を遡って出題されることもあります。
また、第Ⅰ部にまとめられている雇用指標や趨勢(トレンド)は、出題範囲「労働市場に関する知識」をはじめとした時事問題への対策として、非常に有効です。
出題可能性が高い、比較的新しい雇用指標を確認するのに適した資料です。
なお、どの版が出題されるかは神のみぞ知るところではありますが、例年9月に公表され、これまでの出題実績では、最初の出題は翌年3月、または7月のケースがあります。
それでは、第Ⅰ部のポイントを確認します。参照ページを付していますので、ご自身が意外に思った、違和感のあった内容については、資料の記述を確認することをおすすめします。
第Ⅰ部:労働経済の推移と特徴
【第Ⅰ部の全体像】
2024年の雇用情勢は、完全失業率は改善がみられたほか、女性・高齢者を中心に労働参加が進み、労働力人口、就業者数、雇用者数が過去最高となった。
有効求人倍率はほぼ横ばいであったものの、人手不足感の更なる高まりがみられる。
2024年の労働時間は、所定内労働時間、所定外労働時間ともに前年から減少した。
賃金については、現金給与総額は4年連続で増加する一方で、物価上昇率を加味した、実質賃金は、就業形態計では3年連続で減少した。
なお、現金給与総額は所定内給与、賞与などの特別給与ともに増加、その範囲は小規模の事業所等にも広がっており、賃金全体として力強い動きとなっている。(P5)
第1部では第2章と第3章が出題の中心となる。
第1章 一般経済の動向
・2024年の名目GDPは初めて600兆円を超え、実質GDPは4年連続プラス成長となった。(P6)
・企業の業況判断D.Iによると、2024年は業況感の改善が続いており、日本の全企業数の大半を占める中小企業については、年後半にかけて改善した。(P9)
業況判断D.Iは、日銀短観で発表される、企業が景況感を「良い」「悪い」で答えた割合の差(良い-悪い)を示す指数であり、年4回発表される。プラスなら景気が良く、マイナスなら悪いと判断される。
・企業の経常利益の推移をみると、企業規模にかかわらず経常利益は2021年以降増加し、2024年第Ⅱ四半期(4-6月期)に過去最高を更新した。(P10)
・企業の設備投資額は過去最高を更新した。(P12)
・企業の倒産件数は3年連続で増加している。(P13)
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倒産の要因については二つの要因が考えられ、資料でも言及している。
コロナ禍における、実質無利子、無担保(ゼロ・ゼロ)融資の返済が2023年から本格化する中で倒産件数は増加に転じ、2024年は11年ぶりに倒産件数が10,000件を超えた。(P13)
人手不足関連倒産件数は過去10年間でみると増加傾向であり、内訳では、「後継者難型」が最も多いが、「人件費高騰型」や「求人難型」の件数が2022年から大きく増加している。(P13)
・個人消費は持ち直しの動きがある。(P14)
・2024年の消費者物価指数(総合)は、3年連続で前年比2%以上の上昇である。(P17)
第2章 雇用情勢の動向
【全体像】
2024年の雇用情勢は、前年に引き続き改善の動きがみられたが、完全失業率、有効求人倍率はほぼ横ばいで推移し、労働力人口、就業者数及び雇用者数は過去最高となった。(P20)
第1節 完全失業率及び有効求人倍率の動向
・2024年の完全失業率は、人手不足感の強まりなどを背景に2年ぶりに改善し、前年差0.1%ポイント低下の2.5%である。(P21)
【完全失業率の推移】
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2019年コロナ禍前の2.4%に戻っていない点に注意する。
・男性の完全失業率は前年差0.1ポイント低下の2.7%であり、女性の完全失業率は前年差0.1ポイント上昇の2.4%である。(P21)
・完全失業者数は、176万人であり、3年連続の減少である。(P21)
・男性の完全失業者数は、前年差4万人減の101万人、女性の完全失業者数は、前年差3万人増の76万人であった。(P21)
・完全失業者のうち、「自発的理由」は横ばい、「非自発的理由」は3年連続で減少、「新たに求職」は増加している。(P22)
・2024年の有効求人倍率は前年差0.06ポイント低下の1.25倍となり、3年ぶりに低下した。(P23)
【有効求人倍率の推移】
・2024年の正社員の有効求人倍率は、前年差0.01ポイント低下の1.01倍となり、2019年の1.14倍には届かないが、2年連続で1倍を超えた。(P23)
・正社員の新規求人倍率は、前年差0.03ポイント上昇の1.75倍となり、2021年以降4年連続で上昇した。(P23)
第2節 労働力需要の動向
・2020年に全ての産業で人手不足感が弱まったものの、その後は全ての産業において、再び人手不足感が強まっている。(P25)
・「非製造業」の人手不足感は、バブル期以来の過去最高水準だが、「宿泊・飲食サービス」については、引き続き人手不足感は高い水準にあるものの、前年と比べると人手不足感が弱まった。(P25)
・正社員等とパートタイム労働者別にみると、2015年以降は正社員等の方がパートタイムよりも人手不足感が高い状況が続いている。(P27)
・2024年の新規求人数は、パートタイム労働者を中心に、4年ぶりに減少した。(P28)
・人手不足の中で、新規求人数が減少した背景としては、ハローワーク以外による求人手段が増加していることが影響している。(P28)
資料には詳しくは書かれていないが、非正規雇用では、スキマバイトなどの利用者が増えていることも一因と思われる。
第3節 労働力供給の動向
・2024年は女性や高齢者を中心とした労働参加が引き続き進展し、労働力人口は前年差32万人増の6,957万人で過去最高となった。(P30)
・15歳以上人口に占める労働力人口の割合である労働力率は63.3%である。(P30)
・男性の労働力率は71.5%であり、近年、横ばい圏内で推移しているが、女性の労働力率は55.6%であり、過去10年間で6.0%上昇しており、過去10年間で男女差は縮小している。(P30)
・正社員の新規求職申込件数は減少傾向、パートタイム労働者の新規求職申込件数は横ばい圏内である。(P31)
第4節 就業者・雇用者の動向
・就業者数6,781万人、雇用者数6,123万人であり、どちらも4年連続で増加し、過去最高を更新した。(P33)
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就業者は自営業主・家族従業者と雇用者から構成され、雇用者には無期、有期を問わず雇われている人、日雇い、会社や団体の役員も含み、約9割を占めている。
就業者数6,781万人-雇用者数6,123万人=自営業主・家族624万人+従業上の地位不詳34万人である。
・自営業主・家族従業者は減少傾向で推移している。(P33)

出典:令和7年版労働経済の分析P33
・「製造業」の雇用者数は1,010万人であり、横ばい圏内で推移している一方で、「非製造業」の雇用者数は5,113万人であり、4年連続で増加している。
・2015年を基準とすると、最も雇用者数が増加した産業は「情報通信業」であり、次いで「医療福祉」である。一方で最も減少したのは「建設業」である。(P34)
・正規雇用労働者数は10年連続で増加している一方で、非正規雇用労働者数は、横ばい圏内で推移している。(P35)
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正規雇用労働者はコロナ禍においても増加し続けている。また、正規雇用労働者数3,645万人に対し、非正規雇用労働者数2,126万人であるため、その比は、およそ6対4である。(P35)
・男性の正規雇用労働者数、非正規雇用労働者数は横ばい圏内で推移しているが、女性の正規雇用労働者数は10年連続で増加しており、非正規雇用労働者数は横ばい圏内で推移している。(P35)
・女性の正規雇用労働者数は1,298万人、非正規雇用労働者数は1,444万人であり、その差は縮小傾向にある。(P35)
・年齢階級別の人口に占める正規雇用労働者の割合は、過去10年間において、男女ともに、ほぼ全ての年齢階級において上昇傾向で推移している。(P35)
・非正規雇用労働者数の推移をみると、2015~2024年は2020年を除き「自分の都合のよい時間に働きたいから」が増加している一方で、「正規の職員・従業員の仕事がないから」を理由とする、不本意非正規雇用労働者は減少している。(P36)
・不本意非正規雇用労働者割合は低下し、2年連続で1割を下回る水準である。
・転職者数は2020年、2021年に減少したが、2022年から3年連続で増加した(2024年は331万人)。(P38)
・より良い処遇や働き方を求め、正規雇用労働者から正規雇用労働者への労働移動が活発化している。(P38)
・「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」の人数から「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の人数を差し引いた人数は前年に続き増加傾向である。(P38)
非正規雇用から正規雇用 > 正規雇用から非正規雇用
・ノーマライゼーションが進む中で、障害者雇用は大きく進展しており、雇用義務のある民間企業の雇用障害者数は、21年連続で過去最高となった(約68万人)。(P41)
ノーマライゼーションとは、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指すことをいう。
・障害者の雇用義務のある民間企業は、2024年の法定雇用率(2.5%)では、従業員40人以上の規模である。(P41)
・障害種別の雇用者数では、身体障害者が最も多く、知的障害者、精神障害者が続くが、精神障害者の伸び幅が大きい。(P41)

出典:令和7年版労働経済の分析P41
・障害者の法定雇用率の達成割合の推移をみると、2024年は法定雇用率引上げの影響により低下して46.0%であったが、長期的には上昇傾向で推移している。(P43)
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法定雇用率は2024年4月に2.5%へ引上げられ、2026年7月には2.7%への引上げが予定されている。
・2024年10月末時点の外国人労働者数は約230万人で12年連続で過去最多となった。(P44)
・2024年10月末時点の外国人労働者数の在留資格別で最も多いのは、「専門的・技術的分野の在留資格」である。(P44)
・2024年10月末時点の外国人労働者数の国別で最も多いのは、5年連続で「ベトナム」である。(P44)
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外国人労働者数はコロナ禍においても、増加し続けていた点には注意が必要である。また、在留資格別では2023年までは「身分に基づく在留資格」が最も多かった。
・2025年3月卒の新規学卒者の就職率は、人手不足による売り手市場を背景に高水準を維持している。(P46)
[コラム 我が国と主要国における女性の労働参加の状況]
・女性の就業率をみると、20代後半から30代にかけて就業率が下がるいわゆる「M字カーブ」は改善傾向にあり、主要国と比較しても、いずれも遜色ない水準であり、特に「20~24歳」及び「25~29歳」の就業率は、主要国よりも高い水準となっている。(P47)

出典:令和7年版労働経済の分析(P47)
・しかし、女性の正規雇用労働者比率は「25~29歳」をピークとして、30代以降は低下傾向が続く、いわゆる「L字カーブ」が表れている。特に30~39歳にかけて著しく低下しており、主要国との差が約10~30%ポイントにまで広がっている。(P47)

第3章 労働時間・賃金等の動向
【全体像】
2024年の月間総実労働時間は、働き方改革の取組の進展を背景に減少し、年次有給休暇の取得率は、過去最高を更新した。
現金給与総額は、4年連続で増加し、実質賃金の減少率は縮小したが、物価上昇を背景に、3年連続で減少した。賃上げについては、改定額、改定率ともに過去最高を更新した。(P51)
第1節 労働時間・休暇等の動向
・月間総実労働時間は一般労働者、パート労働者ともに減少した。(P51)
・月間総実労働時間は男性、女性ともに減少した。(P51)
・週60時間以上就労雇用者の割合は、引き続き低下している。(P55)
・年次有給休暇の取得率は上昇傾向であり、男女計、男性、女性いずれも、過去最高となった。(P56)
令和6年就労条件総合調査によると、労働者の年次有給休暇取得率は、65.3%であり過去最高である。産業別では「鉱業、採石業、砂利採取業」が 71.5%で最も高く、「宿泊業、飲食サー ビス業」が 51.0%で最も低い。
・企業規模の大きい企業ほど、年次有給休暇の取得率は高い傾向があるが、2024年調査では中小企業の年次有給休暇の取得率の上昇幅が大きくなっている。(P56)
第2節 賃金の動向
・現金給与総額の推移をみると、2024年の就業形態計の現金給与総額は、4年連続で増加した。(P57)
・事業所規模別の現金給与総額は、全ての事業所規模で増加している。(P57)
・実質賃金は、一般労働者、パートタイム労働者のそれぞれでは3年ぶりにマイナスから脱したものの、パートタイム労働者比率の上昇によって、就業形態合計の平均では3年連続の減少となった。(P61)
これはどういうことか?平均値のトリックを数値例で確認します。
一般的に一般労働者は時給が高く、パートタイムは時給は低くなる傾向がありますが、従業員10人の会社の例で考えてみましょう。
【1年前】
正社員:5人、時給2,000円
パート:5人、時給1,000円
全体の平均時給:(2,000円×5人+1,000円×5人)÷10人=1,500円
その後、正社員が1名退職し、パートが1名増えました。
【今年】
正社員:4人、時給2,000円←変わらず
パート:6人、時給1,100円←アップした!
全体の時給:(2,000円×4人+1,100円×6人)÷10人=1,460円
∴パートタイムの賃金(時給)は上昇したものの、(賃金の低い)パートタイムの構成比が上昇したことから、全体の平均賃金は、前年比マイナスとなりました。
・事業所規模別所定内給与は全ての事業所規模で前年から増加、産業別では幅広い産業で前年比2%を超える伸び率であった。(P63)
・賞与などの特別給与は、全ての事業所規模で前年から増加、産業別でも幅広い産業で前年から増加している。(P64)
・労働分配率は、企業の資本金規模にかかわらず、ほぼ横ばいであった。(P65)
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労働分配率は、企業が生み出した付加価値(利益の源泉)のうち、労働者に対してどれだけ支払っているのかを示す指標であり、好況時には利益(分母)が大きくなり、労働分配率は低下する傾向があり、不況時時には利益(分母)が小さくなり、労働分配率は上昇する傾向がある。
第3節 春季労使交渉等の動向
・2024年春季労使交渉での賃上げ率は5.10%で、33年ぶりの高水準であった。(P67)
・政府では、政労使の意見交換の実施や三位一体の労働市場改革等、賃上げを実現するための環境整備に取り組んでいる。(P67)
三位一体の労働市場改革とは、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化を示す。(P67)
・2024年の賃上げ実施企業の割合は、約9割である。(P70)
・賃上げやベースアップを実施又は実施予定の企業割合は、前年よりも上昇しているものの、規模の小さい企業は大きい企業よりも実施割合が低く、改定率についても、規模の大きい企業よりも小幅となっている。(P70)
・夏季一時金及び年末一時金は、3年連続で増加している。(P71)
・労働組合員数は991万人で、3年連続で1,000万人を割り、推定組織率は16.1%となり、どちらも4年連続で低下した。(P73)
・一方で、パートタイム労働者の労働組合員数は過去最高の146万人、推定組織率は8.8%へ上昇した。(P73)
パートタイム労働者の労働組合員数の増加、推定組織率の上昇については過去問でも出題されているため注意が必要である。【第24回問16】
以上が第Ⅰ部のダイジェストです。