令和7年版労働経済の分析第2部ダイジェスト

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このページでは、毎回テーマが異なる第Ⅱ部の要点をお届けします。今回の第Ⅱ部のテーマは「労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて」です。

 令和7年版労働経済の分析

ダイジェストとはいえ、ボリュームがあるため、章ごと(全3章)に確認するのもよいでしょう。

第Ⅱ部:労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて

まずは、第Ⅱ部の内容理解の鍵となるキーワードを紹介します。

第Ⅱ部を読み解く4つのキーワード

・労働生産性:企業の経営効率を測定する指標であり、企業が生み出した付加価値(利益の源泉)を労働投入量で割って求める。
労働投入量には従業員数や、労働時間があり、一人あたり労働生産性や一時間あたり労働生産性を求める。

・無形資産:ソフトウェア、研究開発、人的投資など、形は見えないが、未来の競争力や利益を生み出す源となる資産のことである。

・社会インフラ関連職:いわゆる、エッセンシャルワーカーのことであり、社会基盤を支えるために必要不可欠な仕事に従事する人のことである。医療・福祉や保育、運輸・物流、小売業などが該当する。

・キャリアラダー:ラダーとは、キャリアの梯子(はしご)を意味する。

職務や役割のレベルを段階として表し、業務内容のみならず、給与や役職が、梯子を登るように向上する仕組みのことである。

第Ⅱ部の全体像

第Ⅱ部のトピックは多岐に及ぶものの、大まかな全体像では、「現状」「課題」「対策」の視点で確認すると、内容理解がスムーズになります。

第1章 持続的な経済成長に向けた課題

第1節 我が国のGDP成長率と労働力供給量の推移

・我が国の過去約40年間の実質GDP成長率は、アメリカ、イギリスより低いが、フランス、ドイツとほぼ同水準である。(P78)

・我が国の労働力供給量は1990年代及び2000年代は緩やかに減少し、2010年代以降はほぼ横ばいで推移している。(P80)

・労働力供給量を男女別にみると、男性は1990年代以降減少傾向である一方で、女性は2010年代以降増加傾向である。(P81)

労働力供給量は、就業者数×労働時間で求められ、現在の労働力供給量は女性や高齢者の労働参加によってカバーしている状況である。

かつては他の主要国と比較して、我が国は相対的に長い労働時間が続いていたが、1990年代後半以降、労働時間は減少傾向で推移し、近年では主要国と同程度の水準である。

出典:令和7年版労働経済の分析(P80)

・経済成長と労働参加が進まなければ、2040年の就業者数は、2022年の約6700万人から約1,000万人減少する見込みである。(P82)

・高齢化が進む我が国、ドイツ、フランス及びイタリアの生産年齢人口は、減少傾向となることが予測されている。(P83)

・持続的な経済成長のためには、労働力供給量をできるだけ維持することを前提に、労働生産性の向上を推進していくことが最も重要である。(P84)

・我が国の実質労働生産性の上昇率は、1980年代は3.6%と高かったが、長期的な経済低迷及び少子高齢化などの影響を受け、1990年代に入ると徐々に低下し、2000年代以降は1%前後にとどまっている。(P84)

「実質」労働生産性とは、実質賃金などと同様に、物価変動の影響を加味した労働生産性である。

・アメリカを除く主要国では、2010年代以降の労働生産性の上昇率を比較すると、1%前後となっており、我が国とほぼ同じ水準である。(P84)

労働生産性の「上昇率」については、アメリカを除く他の主要国と似た水準ではあるが、時間あたりの労働生産性は、OECD加盟国38カ国の中で29位、一人あたりの労働生産性は32位で、どちらも主要先進7か国の中で最も低い(労働経済の分析には記載はない)。【日本生産性本部

第2節 労働生産性の向上に向けた課題と対応

・ 労働生産性の上昇には無形資産投資が重要であり、無形資産投資は労働生産性の上昇と正の相関がある。(P86)

無形資産投資には、研究開発、人的資本(教育訓練)、ソフトウェア、組織改編(コンサルタントサービスの導入やDXを活用した業務の見直し等)への投資がある。(P86)

・各産業における無形資産投資の上昇率や、対名目GDP比は、アメリカ、イギリス、ドイツと比較するとかなり低水準である。(P88)

・AI等の利用促進につながる非製造業のソフトウェア投資の促進が重要である。(P89)

・無形資産は、情報化資産、革新的資産、経済的競争能力の3つに分類され、次のような内容である。

  情報化資産 革新的資産 経済的競争能力
内容 ソフトウェア投資、データベース等 研究開発、著作権、デザイン等 ブランド、企業特殊的人的資本、組織改編費用等

・我が国は、アメリカ、イギリス、ドイツと比較して経済的競争能力のGDPに占める割合が低く、経済的競争能力の内訳をみると、特に組織改編費用の割合が低い。

経済的競争能力で紹介した企業特殊的人的資本とは、従業員への教育訓練を、「一般的人的資本」と「企業特殊的人的資本」に分けた場合の、特定の企業でのみ通用し、生産性を発揮する能力やスキルのことである。

組織改編費用とは、ビジネスモデルや業務プロセスを最適化し、労働生産性を高めるための仕組みづくりにかかるコストのことであり、非効率な作業をなくし、DX(デジタルトランスフォーメーション)に適合した業務プロセスの再設計を行うことなどがある。

・大企業と比較し、中小企業ではAI等の利用促進が進んでいない。(P91)

・中小企業は大企業と比較すると資本装備率の割合が低く、特にソフトウェア装備率で差がみられる。(P92)

資本装備率とは、企業がどれだけ設備を従業員1人あたりに対して投入しているかを表す指標で、企業の持ち物(有形・無形の固定資産)を従業員の数で除して求める。つまり、従業員一人あたりの持ち物である。(P92)

・生成AIの活用状況を企業規模別にみると、「全社的に活用している」割合は、従業員数5,000人以上では19.0%だが、300人未満では1.3%にとどまる。(P92)

・AI等の導入には、労働者が導入することによる変化に対し具体的なイメージを持てるようにすることが必要である。(P93)

・介護関係の仕事等では、AI等が期待できると考える者の割合が相対的に低い水準である。(P94)

・労働生産性の上昇に向けては、医療・福祉業及びサービス業においても、AI等のソフトウェア投資の促進が重要な取組みとなる。(P96)

・少子高齢化が進むと医療・福祉業などサービス関係の産業で働く就業者の割合が高まり、相対的に労働生産性の低い産業の就業者のシェアが上昇する傾向がある。(P95)

・高齢化率が高い国ほど医療・福祉業に従事する就業者の割合が高くなる傾向がある。(P97)

・日本の医療・福祉業、卸売・小売業及び宿泊・飲食業の実質労働生産性の上昇率は他国と比べて低い水準である。(P98)

・製造業では実質労働生産性の上昇とともに、就業者数の減少がみられる。(P99)

第2章 社会インフラを支える職業の人材確保に向けて

第1節 社会インフラを支える職業が直面する人手不足の現状

・社会インフラに関連する分野で働く人は「エッセンシャルワーカー」や「キーワーカー」と呼ばれる。(P100)

社会インフラを支える職業は、国際的に統一された定義がないため、労働経済の分析では、社会インフラを支える職業を次の3つのグループに分類している。(P101)

グループ名 具体的な職種 特徴
医療・保健・福祉 医師、看護師、介護職、保育士
欠員率が約6%と最も高く、女性が多い
保安・運輸・建設 警察官、ドライバー、建設作業者
長時間労働が顕著、男性・高齢者が多い
接客・販売・調理 販売店員、調理人、接客係
非正規雇用の比率が高く、賃金が最も低い水準

・就業者全体に占める社会インフラ関連職の就業者数の割合は、約35%である。(P101)

・内訳は概ね3分の1ずつで、医療・保健・福祉グループが約11%、保安・運輸・建設グループが約12%、接客・販売・調理グループが約12%である。(P101)

・社会インフラ関連職では、人手不足が顕在化しており、労働力需要が相対的に高く、欠員率は高止まりである。(P102)

・2024年平均の有効求人倍率をみると、全職業が1.14倍である一方で、社会インフラに関わる分野における職業の有効求人倍率は全職種平均を大きく上回っている。(P102)

有効求人倍率をみると、サービス職業従事者は2.98倍、輸送・機械運転従事者は2.18倍、建設・採掘従事者は5.12倍である。(P102)

・非社会インフラ関連職の欠員率は、2024年には1.7%である一方で、社会インフラ関連職の欠員率はおおむね5%前後で高止まりしており、人手不足がみられる。(P102)

・社会インフラ関連職の新規求人数は、2024年で非社会インフラ関連職の約1.25倍であり、社会インフラ関連職の労働力需要が相対的に高い。(P103)

・一方で、社会インフラ関連職の新規求職者数は、2024年で非社会インフラ関連職の約4割にとどまり、相対的に労働力供給が弱い。(P103)

社会インフラ関連職は、人を求める求人数は多いが、職を求める求職者数が少ない状況であり、欠員率が高止まりしている。(P103)

・職業グループ別にみると、「医療・保健・福祉グループ」の欠員率は、約6%と最も高く、人手不足に直面している。(P104)

・就業者の性別をみると、「医療・保健・福祉グループ」と「接客・販売・調理グループ」では女性が多く、「保安・運輸・建設グループ」では男性が多いなど、性別の偏りがみられる。(P104)

出典:令和7年版労働経済の分析(P106)

・2024年の正規雇用労働者比率は、非社会インフラ関連職は67.8%であるのに対して、社会インフラ関連職は54.4%であり、社会インフラ関連職の正規雇用労働者比率は低い傾向がある。(P107)

・医療・保健・福祉グループは、正規雇用労働者数、非正規雇用労働者数ともに増加している。(P106)

・保安・運輸・建設グループは、正規雇用、非正規雇用労働者数のいずれも近年緩やかに減少している。(P106)

・接客・販売・調理グループでは、正規雇用労働者数より非正規雇用労働者数が多く、正規雇用労働者比率は低い。(P106)

・全年齢に占める25~34歳の割合は、社会インフラ関連職では低下傾向であり、高齢化が相対的にやや進行している。(P108)

・全年齢に占める65歳以上の割合は、3つの職業グループ全てにおいて上昇傾向であり、「保安・運輸・建設グループ」では、全年齢に占める65歳以上の割合が特に高くなっている。(P110)

第2節 社会インフラを支える職業の特徴

・社会インフラ関連職の月額賃金の平均は、非社会インフラ関連職より約5万円低く、医療・保健・福祉グループ>保安・運輸・建設グループ>接客・販売・調理グループの順に低くなっている。(P110)

・職業情報提供サイト(job tag)によると、社会インフラ関連職は立ち作業、病気、感染症のリスク、他者の健康・安全への責任の性質が相対的に高い傾向がある。(P114)

職業情報提供サイト(job tag)では、仕事の性質に関わる39項目のスコアがある。例えば、以下は「看護師」の仕事の性質で示される一部の内容である。

出典:職業情報提供サイト(job tag)「看護師」の仕事の性質(一部)

・社会インフラ関連職は賃金水準の低さだけでは捉えきれない人材確保の難しさも生じている可能性がある。(P114)

・非社会インフラ関連職の月間総労働時間は209時間であるのに対して、社会インフラ関連職が約211時間であり、2時間長い。(P116)

・特に、「保安・運輸・建設グループ」は約218時間と、他の社会インフラ関連職グループと比べて長くなっている。(P116)

・勤務日や勤務時間の融通などの仕事の柔軟性では、社会インフラ関連職と非社会インフラ関連職での大きな違いはみられない。

・非社会インフラ関連職の約20%がテレワークを活用できる状況にある一方で、社会インフラ関連職の割合は5%に満たない水準であり、テレワークの活用が難しい業務が多い。(P118)

・仕事の価値観においては、医療・福祉では「社会貢献」や「達成感」、運輸・建設では「達成感」や「自律性」、接客・販売では「対人関係」や「達成感」で特に高いスコアが示されている。(P121)

・仕事への満足度に関しては、社会インフラ関連職と非社会インフラ関連職のスコアをみると、大きな違いはみられない。(P123)

第3節 社会インフラを支える職業の人材確保に向けて

・事務職と比較し、社会インフラ関連職が人材確保において著しく不利な求人賃金条件にあるとまではいえない。(P125)

・社会インフラ関連職の賃金水準全体では、10年前と比べて着実な改善傾向が確認されている。(P134)

・ただし、「賃金への不満」や「労働条件・勤務地への不満」を退職理由としてあげた割合は、社会インフラ関連職の方が非社会インフラ関連職よりも高い。(P129)

・社会インフラ関連職では、経験に対する賃金の伸びが限定的である。(P130)

・社会インフラ関連職においても、スキルや経験の蓄積に応じて賃金が段階的に上昇する仕組み、「キャリアラダー」の構築を進めることが、人材の長期的な確保と育成において重要な要素となる。(P131)

第3章 企業と労働者の関係性の変化や労働者の意識変化に対応した雇用管理

ここからは第2章で取り上げた、社会インフラ関連職についてではなく、労働者全般の働く意識と雇用管理に関する現状と課題、解決策を検証する。

第1節 企業と労働者の関係性の変化

・転職者数が増加し、生え抜き社員の割合が低下するなど企業と労働者の関係性が変化している。(P138)

・生え抜き社員の賃金プロファイル(賃金と勤続年数の組合せ)によると、年齢や勤続年数が上がっても、以前ほど賃金が大きく上昇しなくなっている。(P139)

その背景には、日本的雇用慣行の変化や、長時間労働を前提として働き方の是正、転職市場の拡大による「生え抜き」社員の減少がある。長く勤めれば、自然と給料が大きく上がるというモデルは機能しにくくなっている。

・離職理由としては、労働条件や仕事内容に対する不満の割合が高い。(P140)

・柔軟な働き方の普及状況をみると、企業規模や従業員規模によって、導入状況にはがみられる。(P141)

・週労働時間60時間以上の雇用者割合は、減少傾向である。(P143)

かつて、週労働時間60時間以上の雇用者は、男性では24.3%という時期もあったが、現在は10%以下である。

・テレワークを導入している企業の割合は、感染症の拡大を契機に急増し、51.8%まで上昇したが、その後は低下傾向で2024年は47.3%である。(P143)

・テレワークを実施している人の割合は、2020年5月に30%を超えるまで急増したが、感染症の収束に伴い低下傾向であり、2024年では約16%である。(P143)

第2節 労働者の意識変化

・働く目的については「お金を得るために働く」とする人の割合が増加傾向であり、約63%に達している。(P144)

・理想的だと思う仕事については、「収入が安定している仕事」が一貫して高い割合であり、近年では新たな選択肢の「私生活とバランスがとれる仕事」も高い割合である。(P146)

・継続就業希望では、全ての年齢階級において「現在の企業で長く勤めることが望ましい」と回答した割合が高いが、若年層は継続就業希望が相対的に低く、仕事内容よりも賃金水準を重視する傾向がある。(P148)

・経験・専門性に関して、「ゼネラリストとして、幅広い経験をしたい」又は「スペシャリストとして専門性を高めたい」という設問については、年齢による明確なトレンドはみられなかった。

60~69歳の層では、約6対4でゼネラリスト志向が多いものの、他の年齢階級では、概ね半々ずつで若干スペシャリストが高いものの年齢階級での差は見られない。

出典:令和7年版労働経済の分析(P150)

[コラムより]
・仕事の重要度スコアから余暇の重要度スコアを差し引いて算出した「仕事中心性スコア」と、一人当たり名目GDPとの関係を分析すると、一人当たり名目GDPが高い国ほど仕事中心性が低くなる傾向がある。【P152】 

第3節 継続就業を促す雇用管理

・約7割の企業が、事業継続に影響を与える人手不足に直面している。(P153)

・職種をみると、「現場の技能職」「営業職・販売職・サービス職」での人手不足が特に深刻である。(P154)

・人手不足に対応するため、企業は新卒採用に加えて中途採用にも力を入れている。(P154)

・人手不足に対応するため、「求人募集時の賃金を引き上げる」ことや「賃金以外の労働条件を改善する」ことに取り組んでいる。(P154)

・継続就業を促進するための雇用管理施策のうち、「若手以外の賃金の引上げ」及び「若手の賃金の引上げ」が、労働者の継続就業希望を高める効果を持つことが確認された。(P158)

・継続就業の促進には、賃金などの処遇改善に加え、働き方の柔軟性、相談しやすい職場風土の醸成など、労働者の意識変化に応じ、それぞれのライフイベントに合わせた働き方が可能となるよう雇用管理を行うことが必要である。(P158)

働きやすさについては、労働者の約28%が「働きやすい」、約56%が「まあ働きやすい」と感じているのに対し、約16%は「働きにくい」と感じている。

働きやすさの要因ランキング
第1位:残業が少ない
第2位:柔軟な有休制度の導入、推進
第3位:育児・介護休業制度の利用促進

働きにくさの要因ランキング
第1位:慢性的な人手不足
第2位:職場で仕事上の相談ができる人がいない
第3位:管理職層から働き方改革関連の発信がない
(P157)

第Ⅱ部ダイジェストは以上です。

合格目指して、頑張っていきましょう。