4-5キャリアコンサルタントとしての倫理と姿勢【テキスト編】
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テキスト&一問一答第4版P273~P280
キャリアコンサルタント倫理綱領
「キャリアコンサルタント倫理綱領」は、キャリアコンサルタントが国家資格に位置づけられた2016年に公表され、2024年に改正が行われた。内容は、主に序文、前文、第1章(キャリアコンサルタントとしての基本的姿勢・態度)、第2章(行動規範)から構成されている。
序文
時代の変化に伴い、新しい働き方の拡大とその実現のため、社会をリードするキャリアコンサルタントへの期待は更に高まり、社会的責任も増しています。多様な相談者や組織からの求めに応えるため、キャリアコンサルタントには、倫理観と専門性の維持向上が必要不可欠です。加えて自らの人間性を磨き、矜持と責任感を持ち、自己研鑽に励むことが何よりも重要です。
序文には、キャリアコンサルタントの社会的責任が徐々に増している中、倫理観と専門性のみならず、人間性を磨くことや、矜持(きょうじ)と責任感について明記された。
前文
本倫理綱領では、キャリアコンサルタントが、職業能力開発促進法に則り、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行い、使命である相談者のキャリア形成の支援と、その延長にある組織や社会の発展への寄与を実現するために、遵守すべき倫理を表明する。
キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法により定められた国家資格であることを肝に銘じる。
第1章 基本的姿勢・態度
第1章では、キャリアコンサルタントとしての基本的な姿勢とあるべき態度が規定されている。特に守秘義務や自己研鑽がよく出題されている。
基本的理念
第1条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、人間尊重を基本理念とし、多様性を重んじ、個の尊厳を侵してはならない。
2 キャリアコンサルタントは、相談者を人種・民族・国籍・性別・年齢・宗教・信条・心身の障がい・文化の相違・社会的身分・性的指向・性自認等により差別してはならない。
3 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが、相談者の人生全般に影響を与えることを自覚し、相談者の利益を第一義として、誠実に責任を果たさなければならない。
多様性の重視や差別の禁止が新たに追加された。人間尊重を基本理念として、誠実に職務を遂行する。
品位及び矜持の保持
第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と矜持を保ち、法律や公序良俗に反する行為をしてはならない。
従来の「品位」に加え「矜持」が加わった。矜持とは誇り、プライドのことをいう。
社会的信用の保持
第3条 キャリアコンサルタントは、常に公正な態度をもって職責を果たし、専門職として、相談者、依頼主、他の分野・領域の専門家や関係者及び社会の信頼に応え、信用を保持しなければならない。
以前の条文の表題「信頼の保持・醸成」から「社会的信用の保持」へ変化しているが、趣旨は以前と同様である。
社会情勢の変化への対応
第4条 キャリアコンサルタントは、個人及び組織を取り巻く社会・経済・技術・環境の動向や、教育・生活の場にも常に関心を払い、社会の変化や要請に応じ、資格の維持のみならず、専門性の維持向上や深化に努めなければならない。
以前は、似た内容が他の条文の一部として記載されていたが、第4条として格上げされた。社会情勢の変化への対応を重視していることがうかがえる。
守秘義務
第5条 キャリアコンサルタントは、業務並びにこれに関連する活動に関して知り得た秘密に対して守秘義務を負う。但し、相談者の身体・生命の危険が察知される場合、又は法律に定めのある場合等は、この限りではない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングにおいて知り得た情報により、組織における能力開発・人材育成・キャリア開発・キャリア形成に関する支援を行う場合は、プライバシーに配慮し、関係部門との連携を図る等、責任をもって適切な対応を行わなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、スーパービジョン、事例や研究の公表に際して、相談者の承諾を得て、業務に関して知り得た秘密だけでなく、個人情報及びプライバシー保護に十分配慮し、相談者や関係者が特定される等の不利益が生じることがないように適切な措置をとらなければならない。
身体・生命の危険が察知される場合(自殺企図など)や、法律に定めがある場合(違法行為を発見するなど)においては守秘義務の例外があり、度々出題されている。
また、スーパービジョンなどにおいても、個人情報やプライバシー保護に努めることが明記された。
自己研鑽
第6条 キャリアコンサルタントは、質の高い支援を提供するためには、自身の人間としての成長や不断の自己研鑽が重要であることを自覚し、実務経験による学びに加え、新しい考え方や理論も学び、専門職として求められる態度・知識・スキルのみならず、幅広い学習と研鑽に努めなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、情報技術が相談者や依頼主の生活や生き方に大きな影響を与えること及び質の向上に資することを理解し、最新の情報技術の修得に努め、適切に活用しなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、経験豊富な指導者やスーパーバイザー等から指導を受ける等、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑽に努めなければならない。
第6条では自己研鑽の重要性、情報技術の習得と活用、スーパーバイザー等からの指導が規定されている。特にIT知識や技能を意味する情報技術の修得を明記している点からは具体的な問題意識が感じられる。
信用失墜及び不名誉行為の禁止
第7条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタント全体の信用を傷つけるような不名誉となる行為をしてはならない。
2 キャリアコンサルタントは、自己の身分や業績を過大に誇示したり、他のキャリアコンサルタントまたは関係する個人・団体を誹謗・中傷してはならない。
自己の専門領域の研鑽を深めて、他のキャリアコンサルタントとの差別化を図ることは重要だが、信用失墜行為や、自己の身分や業績を過大に誇示、他の個人や団体を誹謗・中傷するようなことはあってはならない。
第2章 行動規範
第2章では、キャリアコンサルタントとしての行動規範が規定されている。任務の範囲や組織との関係、多重関係の防止はよく出題されている。
任務の範囲・連携
第8条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範囲を自覚し、その範囲を超える業務や自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。
2 キャリアコンサルタントは、訓練を受けた範囲内でアセスメントの各手法を実施しなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、相談者の利益と、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の分野・領域の専門家及び関係者とのネットワーク等を通じた関係を構築し、必要に応じて連携しなければならない。
自己の業務や能力の範囲を超える場合には、リファー(紹介)やコンサルテーション(照会)を活用し、クライエントの利益の最大化を図る必要がある。また、アセスメント利用の際の留意点が初めて明記された。
説明責任
第9条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対して、キャリアコンサルティングの目的及びその範囲、守秘義務とその範囲、その他必要な事項について、書面や口頭で説明を行い、相談者の同意を得た上で職責を果たさなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、組織より依頼を受けてキャリアコンサルティングを行う場合においては、業務の目的及び報告の範囲、相談内容における守秘義務の取扱い、その他必要な事項について契約書に明記する等、組織側と合意を得た上で職責を果たさなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、調査・研究を行うにあたり、相談者を始めとした関係者の不利益にならないよう最大限の倫理的配慮をし、その目的・内容・方法等を明らかにした上で行わなければならない。
書面や口頭での説明や、2の組織における説明責任は新たに追加された。説明責任は相談者や依頼を受けた組織との信頼関係の構築において、必須条件である。
相談者の自己決定権の尊重
第10条 キャリアコンサルタントは、相談者の自己決定権を尊重し、キャリアコンサルティングを行わなければならない。
キャリアコンサルタントは、クライエントに対して助言や指導はするが、決定してはならない。
相談者との関係
第11条 キャリアコンサルタントは、相談者との間に様々なハラスメントが起こらないように配慮しなければならない。またキャリアコンサルタントは、相談者との間において想定される問題や危険性について十分に配慮し、キャリアコンサルティングを行わなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者との多重関係を避けるよう努めなければならない。自らが所属する組織内でキャリアコンサルティングを行う場合においては、相談者と組織に対し、自身の立場を明確にし、相談者の利益を守るために最大限の努力をしなければならない。
多重関係とは、「キャリアコンサルタントとクライエント」以外の社会的な関係が生じることであり、適切なカウンセリング関係を構築、継続するため、避けるよう努める。
組織との関係
第12条 組織と契約関係にあるキャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対する支援だけでは解決できない環境の問題や、相談者と組織との利益相反等を発見した場合には、相談者の了解を得て、組織に対し、問題の報告・指摘・改善提案等の調整に努めなければならない。
以前は「相談者の了解のもとに職務の遂行に努めなければならない」としていたが、「組織に対し、問題の報告・指摘・改善提案等の調整に努めなければならない」と、より具体的な内容に変更された。
倫理綱領委員会
第13条 本倫理綱領の制定・改廃の決定や運用に関する諸調整を行うため、キャリアコンサルティング協議会内に倫理綱領委員会をおく。
2 倫理綱領委員会に関する詳細事項は、別途定める。
これらの規定は、キャリアコンサルタントとしての倫理観や行動の拠り所となるものであり、試験対策だけではなく、資格取得後には、常に念頭に置いて活動する。
テキスト編は以上です。一問一答編で知識を確認しましょう。