【技能検定】第31回問26~問30の解き方
第31回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。
目次
問26.中高年齢期を展望するライフステージ及び発達課題の知識
【B】選択肢3の内容が難しいですが、選択肢4のエリクソンは、社会との相互作用に焦点をあてた「心理・社会的視点」な発達に焦点を当てている点を理解しておきましょう。
正答:4
1.×:ユングは中年期の40歳前後を、「人生の正午」と名付けた。少年期、成人前期、中年期、老人期の4段階は適切である。
2.×:人生後半の発達課題を、generativity(生殖性、世代継承性、次世代の育成力)としているのは、ユングではなく、エリクソンである。岡田先生の著書では「世代性」と訳している。【岡田先生P82】
3.×:ユングは人生前半、40歳位までは社会的成功を目指し突き進むが、人生後半においては、今までに犠牲にしてきたものを、もう一度自分の中に取り戻す、真の自己の発見する過程を歩むとしている。この過程を「個性化の過程」と呼んでいる。【参考資料:生涯発達の心理学、遠藤利彦著(P89):PDF】【参考サイト:心理学用語の学習】
4.○:エリクソンのライフ・サイクル論は、個人の発達は社会との相互作用で起こるとし、心理・社会的視点を重視しているのに対して、フロイトの精神分析の発達論は、心理・性的・生物学的な視点を重視している。【参考サイト:心理学用語の学習】
問27.中高年齢期を展望するライフステージ及び発達課題の知識
【B】これは、渡辺先生の新版キャリアの心理学[第2版](P94)からの抜粋された文章から穴埋め問題として作成されたようです。
キャリア・アダプタビリティの考え方は、スーパーがオリジナル→サビカスが発展させたとインプットしておきましょう。
正答:2
A.スーパー B.キャリア・アダプタビリティ C.サビカス D.キャリア構築理論【渡辺先生P94】
「キャリア・アダプタビリティ」というとサビカスで有名だが、始めに提唱したのはスーパーである。スーパーは青年期におけるキャリア成熟に加え、成人期以降は新たな職業選択や職業適応のためのキャリア・アダプタビリティが必要であると唱えた。
そして、このキャリア・アダプタビリティを、キャリア構築理論の中核に据え、理論を発展させたがサビカスである。
問28.人生の転機の知識
【C】バンマーネンに関する出題は、国家第8回問8、2級第30回問7で、さりげなく出題されたことはあるのですが、本格的な出題は初めてです。初見では大変難問ですが、内容を理解しておきましょう。
シャインは、キャリアアンカーで有名なシャインです。「組織社会化」は、共に組織心理学者であるバンマーネンとシャインの共同で提唱されました。
組織社会化とは、例えば新入社員や中途入社社員が、その会社(組織)に必要な態度や知識、技能を身につけて徐々に馴染み、組織と個人の相互作用により、力を発揮、組織と個人がWin-Winの関係になることである。
そのためには、教育研修などの組織側からの「社会化戦略/戦術」と、各個人の主体的で能動的な「プロアクティブ行動」の双方が必要であるとしている。
組織社会化=社会化戦略(戦術)+プロアクティブ行動
正答:1
1.○:組織社会化は、個人が組織の成員(メンバー)になるために、必要な態度や知識を習得するプロセスのことであり、組織と個人の相互の働きかけからなる。【参考サイト:リクルートマネジメントソリューション】
2.×:組織による働きかけとともに、新規参入者自身が主体的で能動的な存在であることが必要である。
3.×:プロアクティブ行動の主体は、組織ではなく新規参入者自身である。プロアクティブ行動とは、自らが積極的に行動し、組織に馴染もうとする主体的な適応行動のことである。【参考サイト:カオナビ】
プロアクティブには、先取り、積極的、能動的の意味があるのに対し、受動的な動きはリアクティブという。
4.×:社会化戦略や社会化戦術は「組織」が新規参入者に対して社会化を促進する働きかけのことである。
つまり、組織のメンバーらしさを身につける組織社会化のためには、「組織からの社会化戦略・戦術」と、「新規参入者(個人)のプロアクティブ行動」の双方の努力が必要である。【参考サイト:人的資産研究所】
問29.人生の転機の知識
【B】シュロスバーグの転機に対処するための資源(4S)に関する出題です。4つのSの内容を理解しましょう。これらは、転機を迎えたクライエントに対する、キャリアカウンセリングにおいても活用できます。ご自身の転機の際にも、4Sを点検してみましょう。
正答:2
1.○:Situation(状況)の内容として適切である。転機の引き金、タイミング、コントロール、役割の変化などがある。【渡辺先生P196】
2.×:Self(自己)には、社会経済的地位、性、年齢と人生段階、健康状態などの個人的特徴のほか、変化や対処に関係のある物の見方などの心理的資源がある。【渡辺先生P196】
3.○:Support(周囲の援助)の内容として適切である。転機を乗り越えるために望んでいる好意、肯定、助力を得られているか。配偶者、パートナー、親しい家族、友人など、広い範囲で援助を受けられるか、などがある。【渡辺先生P197】
4.○:Strategies(戦略)の内容として適切である。広い範囲の戦略を使っているか、転機を変化させるような行動を取っているか、転機の意味を変えるように試みているか、ストレスを楽々と切り抜けるように試みているか、などがある。【渡辺先生P198】
問30.個人の多様な特性の知識
【B】ひきこもりに関する出題は、これまでにあまり多くはなく、選択肢レベルでは多少の出題がある程度です。
当ガイドラインは2010年のもので新しいものではないのですが、内容を見てみると、私がアラフィフ、氷河期世代ということもあってか、人ごととは思えないくらい身近に感じる内容でした。
そのように感じることは、今でも、社会的に解決に至っていない問題であるためと感じました。
正答:3
1.×:青年期に始まるひきこもりにも、思春期年代の不登校・ひきこもりと共通の側面が存在する。【P9】
具体的には、思春期を通じて特徴的とされる心性に充進した両価性がある。近づきたい・離れたい、大好き・大嫌い、助けてほしい・かまわないでといった正反対の気持ちに激しく揺れる思春期の子どもは挫折や自己の危機に際して適切な支援を求めることができないという特性が目立つ。【P9】
2.×:一般的に、思春期( 10歳から18歳くらい)の主たる発達課題は、「両親(とりわけ母親)からの分離」と「自分探し、自分作り」である。【P8】
3.○:同性仲間集団における、適応上の危機の増大や現実に生じた失敗は、たとえそれが些細なものであったとしても、子どもに強い挫折感と恥の感覚を経験させ、同時にそれが生じた現場である仲間関係や学校生活を回避させ、子どもを家にとどめる強力な原動力として作用する。【P8】
4.×:家族を揺さぶる問題が家庭に生じているような事態も、思春期の子どもを家族にしばりつけ、学校生活などの社会的活動を回避させることがよくある。【P9】
参考文献・資料
新版キャリアの心理学渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)