第18回問31~問35の解き方

第18回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!

問31.人生の転機の知識

 金井壽宏(かないとしひろ)先生は初登場ですので、びっくりした方が多かったでしょう。

ただし、正答選択肢の2は過去にも出題されている内容ですので、落ち着いて獲得した方もいると思いますが、それ以外の方は、選択肢1の正誤判断ができないと消去法のアプローチは出来ず、獲得できなくてもやむを得なかったでしょう。

金井先生の理論は岡田先生の著書にも取り上げられており、現在、これからの世の中では有用な理論と感じます。内容を理解しましょう。

1.×:金井壽宏(かないとしひろ)は神戸大学名誉教授で、日本におけるキャリア研究の第一人者である。シャインの著書の日本語訳なども多く手掛けているが、キャリア・デザインとキャリア・ドリフトという考え方を提唱しており、詳細は岡田先生の著書にある。

キャリア・デザイン:人生や仕事生活の節目には、自らのキャリアの過去を内省し、将来を展望する。

キャリア・ドリフト:ドリフトは漂流の意。偶然やってきた機会も楽しみながら生かす。

キャリア・デザインがないとドリフトを楽しむことができず、ただ流されてしまうため、デザインが大切である。

デザインの視点:シャインの次の3つの問いを視点とする。

①何が得意か、②何をやりたいか、③どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるか。

シャインのキャリアアンカーや、偶然の機会を望ましく捉える、クランボルツのプランドハプンスタンスを思わせる理論を感じさせる。

働くひとの心理学 岡田昌毅著 ナカニシヤ出版P68を元に編集

そのため、「ドリフト状態があると主体的なキャリア形成は難しい」という問題文は金井先生のキャリア・デザイン-キャリア・ドリフトの理論からすると、不適切ということになる。

2.○:準備→遭遇→適応→安定化の4段階のトランジション・サイクルをニコルソンは提唱している。次のサイトが参考になる。【そうだ!これからはメンタルだ】なお、ニコルソンは第7回問12、第8回問13でも出題されている。

3.×:職業的発達段階には、暦年齢にゆるく関連した「移行期」があるとしたのは、レヴィンではなく、スーパーである。【渡辺先生P45】なお、この問題文は第15回問31と同様である。

4.×:レヴィンソンは、成人期を四季に例えたライフサイクルに焦点を当てており、おおよそ25年続く4つの発達期を経て進むと考えた。成人への過渡期や人生半ばの過渡期は適切だが、65歳以降に「統合性」対「絶望」の発達課題が訪れるとしたのは、エリクソンの個体発達分化の図式による発達課題である。【岡田先生P78】

問32.人生の転機の知識

 転機(トランジション)に関する、理論家横断的な問題です。理論家とキーワード、その考え方について理解を深めましょう。

A.○:試験で超頻出のシュロスバーグの4Sである。Situation(状況)、Self(自己)、Support(周囲の援助)、Strategies(戦略)はソラでも言えるようにする。【渡辺先生P193】

B.○:サビカスは、機動性という変化を常態とするキャリア構築の概念として、キャリア・アダプタビリティの重要性を主張している。

職場や地域社会から要請されている発達課題に取り組むだけでなく、予測できないトランジションや、それにともなう精神的ショックへの対処もする必要があるとしている。【渡辺先生P96】

C:×:意思決定の理論として、積極的不確実性を提唱したのは、ジェラットである。なお、積極的不確実性は、ジェラットの後期理論と呼ばれている。【渡辺先生P119】クランボルツは、社会的学習理論-プランドハプンスタンス(計画された偶発性)とおさえておく。

D.×:ブリッジズは、転機のプロセスについて、「終焉」「中立圏」「開始」の3つの様相があることを明らかにした。【岡田先生P86】ブリッジズの転機の理論は、終わりから始まる、と覚えておく。

問題文にある、「再探索」「再確立」はスーパーの理論にある。

それぞれの発達段階には、暦年齢にゆるく関連した移行期(Transition)があるとし、その移行期にはミニ・サイクルが含まれるとしている。ミニ・サイクルには、新たな成長、再探索、再確立といった再循環(リサイクル)が含まれる。【渡辺先生P45】

∴AとBが適切であるため、正答は1となる。

問33.個人の多様な特性の知識

 障害者に対する合理的配慮については、これまでも出題されており、判断の難しい問題が出題されることもありますが、今回は支援の基本姿勢に照らして、常識的にアプローチできる問題でしたが、「合理的配慮事例集」は、内容が具体的に参考になります。実務においては必携といえるでしょう。

 合理的配慮指針事例集

1.×:障害者雇用促進法では、「障害者」の定義を次のように定めている。

「身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」【障害者雇用促進法第二条

そのため、障害者手帳の有無は問わない。ちなみに本問は第6回問14の選択肢と同様である。

2.×:本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明することは適切である。【P12など】

3.○:合理的配慮の提供にあたっては、障害者と事業主がしっかりと話し合った上で 、どのような措置を講ずるかを決定することが重要である。【P3】

4.×:合理的配慮は、個々の障害者の障害の状態や職場の状況に応じて提供されるものである。【P3】

問34.個人の多様な特性の知識

 治療と仕事の両立支援に関しては、第15回、第17回でも出題されています。併せて確認しておきましょう。出典は初出の資料ですが、治療との両立におけるキャリアコンサルタントの役割を考えながら検討しましょう。

自社版のガイドラインの作成など、具体的な業務内容にも言及している、実務的にも活用できる貴重な資料です。

 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業報告書

1.○:相談者のワークライフキャリア全体を見て、納得出来る選択と行動のための支援を行うことがキャリアコンサルタントの役割です。【P13】

2.×:キャリアコンサルタントは、治療方法などには立ち入ることは出来ません。自己の専門性と限界を認識した上で、治療の選択は医療関係者へ適切にリファーし、医療者からの情報を得ながら治療以外の仕事を中心とした人生全体のキャリア形成をサポートします。【P13】

3.○:病気による転機はその後のキャリアへ大きく影響することがありますが、生涯ずっと健康であり続けることは難しく、病気になる時期を経ながら職業人生を送る人が今後増えてくるでしょう。キャリアコンサルタントはこのことを理解し、準備しておくことが大切です。【P10】

4.○:個人へのキャリア形成支援のみならず、環境へ働きかけることもキャリアコンサルタントに求められています。相談者と関係機関をつないだり、事業所に両立支援制度策定を提案するなど、環境に働きかけることが、キャリアコンサルタントに求められる役割なのです。【P12】

ヨコ解きリンク

治療と仕事の両立に関しては、最近よく出題されています。特にキャリアコンサルタントの役割に焦点をあてて、理解を深めましょう。

第15回問33 第17回問34

問35.カウンセリングの技能

 ブリーフ・セラピーに関する本格的な出題は初めてであり、これまで養成講座などでは知る機会はなかったのではないかと思います。(ただし、ミラクル・クエスチョンは、第16回問8での出題があります。)

この問題は、初見では獲得出来なくても仕方がない「捨て問題」に位置づけていますが、ブリーフ・セラピーについては、今後の出題に備えて、理解を深めておきましょう。内容はジル資料にまとめられています。【ジルP141~P146】

ブリーフセラピーは、「短期間で問題の解決」を試みる心理療法であり、解決に焦点を合わせる、未来志向型の療法であり、アメリカのミルトン・エリクソンに影響を受けた人たちが技法化した療法である(発達段階で有名なのはエリク・エリクソンで別人)。

ブリーフセラピーでは、ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)による4つの質問法が有名である。

4つの質問法には、ミラクル・クエスチョン、例外探しの質問(例外の質問)、コーピングの質問、スケーリングの質問がある。

なお、ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)は、解決思考アプローチとも呼ばれる。

1.○:コーピングとは、ストレスなどへの対処を言うが、コーピング・クエスチョンは、逆境を乗り越えるために、クライエントが用いることができる回復力や持久力を評価するための質問である。それにより、クライエント自身がもつ自分の強さや資源を発見できるよう援助する。【臨床心理学事典

2.×:関係性の質問(リレーションシップ・クエスチョン)もブリーフ・セラピーの質問法だが、自分にとって重要な(大切な)人ならばどう思うか、を考えさせる人間関係を利用して新しい視点を与えるための質問である。

3.×:これは、ミラクル・クエスチョンの内容である。【ジルP146】【臨床心理学用語事典

4.×:これは、例外の質問の内容である。【臨床心理学用語事典

なお、第18回問9でミラクル・クエスチョンとともに出題された「スケーリング・クエスチョン」とは、「最悪を1,最高を10としたら、今はどのくらいですか。」など、尺度を用いて回答してもらう質問法である。【臨床心理学用語事典

参考文献・資料

働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)

そうだ!これからはメンタルだ

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

合理的配慮指針事例集(PDF)

障害者雇用促進法

労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業報告書(PDF)

臨床心理学用語事典

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