第19回問16~問20の解き方
第19回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
問16.企業におけるキャリア形成支援の知識
本問は今回の出題内容の中で、最も出題の意図を汲みかねる問題で、知らなければ、捨て問題としてもやむを得ないでしょう。
管理人は簿記会計を自己の専門分野の一つにしており、事業主としても経理処理に馴染んでいますが、「子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)」は働く本人の負担はなく、事業主負担のみのため、馴染みが無い方が多いのではないでしょうか。
1.○:企業負担分の社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料)は「法定福利費」である。
「法定福利費」とは、法律で義務づけられている社会保障制度の費用(企業負担分)をいい、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、労働保険料等をいう。【厚生労働省】
2.×:子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は、子育て支援のために充てられる税金のことであり、全額事業主負担であり、会計処理上は「法定福利費」に該当する。
なお、児童手当拠出金は、平成27年4月から「子ども・子育て拠出金」という名称に変更されており、この名称での出題にもやや疑問がある。
3.○:企業負担分の社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料)は「法定福利費」である。
4.○:企業が支出する住宅ローンの利子補給は、法定外福利費である。
「法定外福利費」とは、法律で義務づけられていない福利厚生関係の費用で、住居に関する費用、医療保健に関する費用、食事に関する費用、慶弔見舞い等の費用等をいう。【厚生労働省】
働く人の親睦や、リフレッシュのためのレクリエーションなどにかかった費用なども福利厚生費として「法定外福利費」に位置付けられる。
問17.企業におけるキャリア形成支援の知識
高度プロフェッショナル制度に関する出題は、国家試験、2級技能検定を通じて初めての出題でした。制度の内容理解や実際の仕組みの設計には、厚生労働省の下記のリーフレットが役に立ちます。
1.×:導入する際には、対象となる事業場において労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数により、必要な事項を決議する必要がる。【P4】
2.×:高度プロフェッショナル制度の対象者には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されない。【P3】
なお、休日については、対象労働者に年間104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない。【P12】
3.○:新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務のうち、例えば、完成品の検査や品質管理を行う業務や、研究開発に関する権利取得に係る事務のみを行う業務の場合には、高度プロフェッショナル制度の対象業務にはなり得ない。【P9】
4.×:高度プロフェッショナル制度導入の年収要件は、年収1,075万円以上である。【P10】
問18.企業におけるキャリア形成支援の知識
かつては、しばしば出題されていた職業能力開発促進法ですが、第13回以来、大問(選択肢4つ分の問題)は出題されていませんでした。今回は、事業主等が行う職業能力開発促進の措置に関して、やや細かな内容が出題されました。選択肢2のみ、条文に明記がありません。
また、職業能力開発促進法に関する大問は久しぶりで、第13回以来の出題でした。
1.○:公共職業能力開発施設により行われる職業訓練の他、当該事業主以外の者の設置する施設での教育訓練の活用も明記されている。【職業能力開発促進法第十条の二】
2.×:職業能力開発促進法上、そのような規定はない。
3.○:教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために、有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇、再就職準備休暇その他の休暇を付与することが明記されている。【職業能力開発促進法第十条の四】
4.○:労働者が自ら職業能力の開発及び向上に関する目標を定めることを容易にするために、情報の提供、キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うことが明記されている。【職業能力開発促進法第十条の三】
職業能力開発促進法に関する問題は、かつては、本当によく出題されており、今後も要注意です。
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問19.労働市場の知識
厚生労働白書からの出題は、これまではそれほど多くなく、国家試験では第7回問15(大問)や、第9回問1(選択肢)で出題されているのみです。厚生労働白書は厚生労働省所管のテーマ全般がまとめられており、それよりも、労働市場、雇用情勢に特化とした、「労働経済の分析」からの出題が多いです。
1.○:2040年においては男性の42%が90歳まで、女性の20%が100歳まで生存するとみられる。【P14】
2.○:2040年には20~64歳人口が人口全体のちょうど半分を占めるまでに減少すると推計されている。【P4】
3.○:我が国の人口は2008(平成20)年をピークに減少に転じているが、女性や高齢者を中心に就業率が上昇していることにより、労働力人口や就業者数は、1990年代後半の水準を維持している【P24】
4.×:2017年と2040年の就業者数の構成比(シェア)を比較した場合、シェアが増加すると見込まれるのは製造業、医療・福祉、運輸業、教育・学習支援、情報通信業である【P27】
問20.労働市場の知識

労働力調査の用語に関する問題は、定期的に出題されていると言って良いでしょう。ヨコ解きもして、備えましょう。用語に関する解説は、総務省統計局のサイトにあります。
こちらの図表を理解しましょう。また、選択肢3の完全失業者の定義は頻出です。
(総務省統計局ホームページより転載。)
1.○:「労働力人口」は、15歳以上の人口のうち,「就業者」と「完全失業者」を合わせたものである。
2.○:就業者とは、従業者と休業者を合わせたものをいう。
3.×:完全失業者は、次の3つの条件を満たす者である。
①仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない。)。
②仕事があればすぐ就くことができる。
③調査機関中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。
4.○: 「完全失業率」とは、「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合である。
労働市場の用語に関する出題
労働力調査や有効求人倍率に関する出題は多く、数値や雇用情勢に関する出題等については下記の学習項目別ヨコ解きリンクをご参照ください。
参考文献・資料
厚生労働省
職業能力開発促進法
令和2年版厚生労働白書(PDF)
総務省統計局