第20回問01~問05の解き方
第20回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。なお、過去の類題の過去問解説のリンク先の内容は、直近3回分以外はみん合☆プラス会員限定公開となります。
目次
問1.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解
最近は頻出とも言える、新型コロナウイルス感染症の影響に関する出題です。選択肢2は「5割」を判断するのは困難でしたが、テレワークの実施が「正規よりも非正規」には違和感があります。消去法でアプローチしましょう。
1.○:2020年4月の緊急事態宣言下の経済活動の停止に伴い、企業は従業員の雇用維持に積極的に取り組んだことから、休業者数は男女ともに急増した。【P4】
2.○:2020年4月1日時点で「フリーランスで働く者」に新型コロナウイルス感染症に関連した影響について尋ねたところ、約5割の者が「業績への影響(売上高・収入の減少)」を挙げている。【P34】
3.×:雇用形態別に見ると、正規雇用ではテレワークを実施した者の割合は4割強であったのに対して、非正規雇用では2割弱であった。【P8】
4.○:男性が家事・育児の役割分担を増やす動きも見られたが、自粛生活で家事・育児負担の絶対量が増加し、相対的に女性の負担が増え、生活満足度がより低下した。【P11】
問2.キャリアコンサルティングの役割の理解

前回第19回問2に続いての出題で、第20回対策総仕上げ模試でも出題していましたので、対策をしていた方も多かったのではないでしょうか。選択2~4はキャリアコンサルタントの役割として違和感はありません。
働く環境の変化に対応できるキャリアコンサルタントに関する報告書
1.×:専門性を深化させ拡大するのは適切だが、自己完結できるようにするのは不適切である。
活動領域ごとの役割に応じた専門性を高めること、個人の強みとして専門領域へ踏み出すこと及び近接領域の専門家・専門機関へのリファーする力が求められる。【P6】
2.○:キャリアコンサルタントは、職業キャリアのみならずライフキャリア上に起こりうる課題やこころの揺らぎを発見する視野の広さや、ケース全体を俯瞰する力が必要となる。【P7】
3.○:企業の中で、労働者の自律的・主体的なキャリア形成を促すために、企業内の課題解決に向けて、キャリアコンサルタントは経営者層へのアプローチなど企業への提案力、人事担当部署との協業をする能力が求められる。【P7】
4.○:様々に雇用対策が展開される中で、キャリアコンサルタントには、活躍領域や、対応の局面にも広がりを持つことが期待される。【P9】
ヨコ解きとは、同じ出題範囲の過去問題を回数横断的に解くことを言い、その出題範囲の内容を短期間でマスターする、みん合でオススメしている過去問の攻略方法をいいます。詳しいヨコ解きの方法は、「過去問の解き方、私の場合」をご覧ください。
問3.キャリアコンサルティングの役割の理解
キャリアコンサルティングの役割の理解からの出題が、2問出題されたのは第12回試験以来、第15回からの新出題範囲になってからは初めてです。上位3つを問う出題は珍しくやや難しい内容でした。
正答:3.AとCとD
正社員の上位3つは以下のとおりである。
1位:仕事に対する意欲が高まった。
2位:上司・部下との意思疎通が円滑になった。
3位:自分の目指すべきキャリアが明確になった。
令和2年度能力開発基本調査P57より
なお、令和3年度能力開発基本調査においても、正社員の上位3つに変動はない。
令和3年度能力開発基本調査P60より
問4.キャリアに関する理論

キャリア理論家と、提唱した理論の組み合わせを問う問題です。正答選択肢の3のみ、判断が難しかったかもしれませんが、適切な3つは判断しやすい問題でした。
1.○:ジェラットは、前期理論では連続的意思決定プロセスを提唱し、後期理論では積極的不確実性を提唱した。左脳だけではなく、右脳も使った意思決定を唱えている。選択肢の文章は渡辺先生の著書にある。【渡辺先生P120】
キャリアの理論に関する出題は、渡辺三枝子先生の「新版キャリアの心理学」が出典と思われる出題が多く、木村先生の著書とともに机上に用意しておきたい参考書です。なお、2018年7月に出版された第2版のページ数を表記しています。
2.○:ハンセンが提唱した「統合的人生設計」の内容として適切である。人生の役割を「キルト」に例えている。【渡辺先生P209】
3.×:キャリア・ダイナミクスではなく、キャリア・アダプタビリティである。
スーパーは、成人期以降はこのキャリア成熟に求められる計画的態度や意思決定能力を応用し、新たな職業選択や職業適応することが必要であるとし、キャリア・アダプタビリテイという新たな概念を提示した。
なお、このキャリア・アダプタビティリティはサビカスに引き継がれ、キャリア構築理論の中核概念となった。【渡辺先生P94】
また、「キャリア・ダイナミクス」はシャインの提唱した概念である。【渡辺先生P151】
4.○:ホールが提唱した「プロティアン・キャリア」の内容として適切である。【渡辺先生P171】
問5.キャリアに関する理論
やや変化球な問題で、選択肢1の意図する内容がつかめていないのですが、選択肢3と4は積極的に判断したい問題です。
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査
当サイトでは通称、ジルや、ジル資料と呼んでいますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT:ジルピーティー)で発行している資料で、キャリア理論とカウンセリング理論がわかりやすくまとめられており、おすすめです。なお、PDFファイルは無料でダウンロードでき、移動時間等の学習に役立ちます。
1.×:キャリアや職業に関する「発達課題」が何を意味しているのかが不明だが、ソーシャルスキル・トレーニングは、様々な社会的状況に適切に対応し、円滑な対人関係と実現するため、不適切な行動を修正し、ソーシャルスキルを学習する。【ジルP132】
なお、ソーシャルスキル・トレーニングは、発達障害の改善にも活用されることもある。
2.○:それはそうだろう、という出題内容だが、ジル資料に出典はある。
自己理解が不十分であればこれまでのキャリアを振り返ること、職業に関する理解が足りない場合は業界研究や公的職業訓練を体験することが有効なように、意思決定スキルが不十分な場合は意思決定プロセスを改善するための支援が重要である【ジルP30】
3.×:自己効力感を高めるのは「4つの情報源」、遂行行動の達成、代理的経験、言語的説得、情動的喚起である。【ジルP32】
なお、偶然の出来事を活かす5つのスキルは、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心であり、クランボルツの理論である。【ジルP47】
4.×:ライフテーマは、サビカスのキャリア構築理論の中核概念であり、それの確認のためには、キャリア構築インタビューが重要になる。【渡辺先生P104】
なお、基礎的・汎用的スキル(能力)は、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力のことであり、学校におけるキャリア教育において育成すべき力のことである。
参考文献・資料
働く環境の変化に対応できるキャリアコンサルタントに関する報告書(PDF)
令和2年度能力開発基本調査(PDF)
令和3年度能力開発基本調査(PDF)
新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(労働政策研究・研修機構2016年)