第20回問06~問10の解き方
第20回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
問6.キャリアに関する理論
シャインの大問(選択肢4つ分の問題)は、第16回以来でしたが、それまでには概ね毎回出題されているので、今後も要注意です。なお、選択肢1と2の内容は、第20回対策総仕上げ模試の内容が的中しました。
1.×:同一の職業においても、人それぞれでどこに価値をおくかは様々であるため、キャリア・アンカーと職業を一対一で結びつけない。【渡辺先生P162】
2.○:シャインは、「生物学的・社会的」「家族関係」「仕事・キヤリア」の3つのサイクルが相互に影響し合って、人が存在しているとした。【渡辺先生P153】
3.○:才能と能力は「何が得意か」、動機と欲求は「何をやりたいのか」、意味と価値は「何をやっている自分が充実しているのか」の3つの問いが有効であるとした。【渡辺先生P164】
4.○:キャリア・サイクルの段階と課題については、木村先生の著書で整理されている。キャリア中期の危機の内容として適切である。この段階では、自分のキャリアの再評価を行い、現状維持か、キャリアを変えるかを決める。【木村先生⑤P64、⑥P232】
木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上に是非ご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。2022年5月に6訂版が刊行されました。参照ページ数は5訂版を⑤、6訂版を⑥としています。
問7.キャリアに関する理論

動機づけ理論から、今回はマズローの単独での出題でした。基礎的な内容が問われていますので、獲得したい問題です。
1.○:人間の欲求を低次から高次ヘと5つに分類し, これらの欲求はピラミッド型の階層をなしていると考え、欲求階層説を提唱した。【岡田先生P23】
岡田昌毅先生の「働くひとの心理学」は、木村先生や渡辺先生の著書には記述がほとんどない、発達理論に関する記述が充実した参考書です。養成講座のテキストにそれらの記述のある方はマストとまでは言えませんが、キャリア理論全般についても、体系的にまとめられている良書です。
2.×:基底層より①生理的欲求、②安全の欲求、③所属と愛情の欲求、④ 自尊と承認の欲求、⑤自己実現の欲求の5層から構成される。【岡田先生P23】
3.×:自分に足りないものを外部から補おうとするのは欠乏欲求であり、自分の中にあるものを外に出そうとするのが成長欲求である。【岡田先生P23】
4.×:上位の欲求は下位の欲求が充足されて初めて発生するとした。【岡田先生P23】
問8.カウンセリングに関する理論
フロイトの精神分析に関する基礎的な理解が問われる内容で、第20回対策総仕上げ模試(問11)の内容がほぼ的中しました。ジル資料が出典と思われます。
1.○:前意識は普段は気がついていないが何かのきっかけで意識にのぼったり、思いだそうと努力することで思い出せる領域のことをいう。
2.○:心の構造を、自我(ego)、イド(エス)、超自我(super ego)の3 層からなる「心的装置」として捉え、これら3 つの相互の力動的な関係を考えていこうとするのが構造論である。【ジルP102】
3.×:現実原則で動くのは、意識的な働きをする「自我」である。「イド(エス)」は無意識的な本能欲求で快楽原則で動く。そして「超自我」は道徳原則で動く。【ジルP102】
4.○:通常は無意識的かつ反射的に生じる。防衛機制自体は誰にでも認められる正常な心理的反応である。【ジルP103】
問9.カウンセリングに関する理論
行動療法の各療法が幅広く問われることは珍しく、このような出題は、第2回問29以来となります。これらの各療法は、拙著テキスト&問題集第2版P57にまとめていますので、お持ちの方はご参照ください。
1.×:ある刺激に不安反応がある場合に、それと拮抗する弛緩反応を作り、拮抗制止(逆制止)の状況にして不安反応を徐々になくしていく方法を、系統的脱感作という。トークン・エコノミー法は、選択肢4の内容である。
2.×:危険を伴う状況がない状況で、不安刺激に直面させることによって、不安や恐怖を克服する療法を暴露療法(エクスポージャー法)という。
3.○:正しい方法を容易な段階から順に、段階的に達成させて強化し、段階的に目標行動を獲得させる方法を、シェイピング法という。
4.×:これはトークン・エコノミーの内容である。
問10.カウンセリングに関する理論

心理療法の名称と提唱者、キーワードに関する出題は、これまでに出尽くされた感があり、拙著の総仕上げ問題集初版(P94~P97)にて、これまでに出題された人名やキーワードを、総ざらい確認することができます。お持ちの方はご活用ください。
1.×:フロイト-精神分析は適切だが、絶対臥辱期は、森田正馬が創始した精神療法である森田療法の初期段階を意味する。
2.○:ロジャーズの来談者中心療法の内容として適切である。
3.×:エリス、論理療法は適切だが、無意識はフロイトの精神分析でのキーワードである。
4.×:吉本伊信、内観療法は適切だが、不合理な信念はイラショナル・ビリーフのことであり、エリスの論理療法での重要なキーワードである。
参考文献・資料
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)
働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(労働政策研究・研修機構2016年)