第22回問31~問35の解き方
第22回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
問31.人生の転機の知識

転機に関して、理論家と理論に関する横断的な問題です。正解選択肢のAとCについては、第12回問12と同じで、BとCについても、これまでによく問われている内容でした。
正答:2(AとC)
A.○:ブリッジズのトランジションのプロセスは、終わりから始まる。「終焉(終わり)」⇒「中立圏」⇒「開始」と覚える。【岡田先生P86】
B.×:×:準備→遭遇→適応→安定化の4段階のトランジション・サイクルをニコルソンは提唱している。ニコルソンは、前回第21回問30をはじめ、何度か出題があるが主要参考書には記載がない。この4段階をおさえておこう。
C.○:スーパーは、職業的発達段階に歴年齢にゆるく関連した「移行期(Transition)」があるとし、その移行期にはミニ・サイクルがあるとした。【渡辺先生P45】
D.×:よく出るシュロスバーグの4S。Sustain(持続)ではなく、Strategies(戦略)。
Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(戦略)の4つは正しく覚える。【渡辺先生P196】
問32.個人の多様な特性の知識

最近よく出題されている「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」からの出題です。支援の基本姿勢や、プライバシー保護の視点から不適切なものを選ぶのは容易な問題でした。
正答:1
1.×:疾病に関する情報は、機微な個人情報であることから、労働安全衛生法に基づく健康診断において把握した場合を除いては、事業者が本人の同意なく取得してはならない。【P3】
2.○:治療と仕事の両立支援は、私傷病である疾病に関わるものであることから、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本となる。【P3】
3.○:就労によって、疾病の増悪、再発や労働災害が生じないよう、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うことが就業の前提となる。【P3】
4.○:育児や介護と仕事の両立支援と異なり、時間的制約に対する配慮だけでなく、労働者本人の健康状態や業務遂行能力も踏まえた就業上の措置等が必要となる。【P3】
問33.個人の多様な特性の知識

職場におけるダイバーシティ推進事業報告書は第19回問33でも出題されています。性的マイノリティへの支援に関する出題は最近増加傾向であり、実務的にも重要性を増していますので、資料にも出来るだけ目を通しましょう。
正答:4
1.○:周囲の人に頼れないだけでなく、職場内で相談先がないことや、あったとしても担当者の無理解やアウティング(本人の同意なく第三者に暴露すること)されることを恐れ、相談に赴くことへの心理的な障壁がある。【P8】
2.○:戸籍上の性別を変更していないトランスジェンダーにおいては、カミングアウトしないことは、性自認に沿って過ごすことができないということになり、生きづらさにつながる。【P9】
3.○:また、ロールモデルがいないことや当事者が職業観を養う機会がないことで、「自分は働くことができないのではないか」と自己否定的な考えを持ちやすく、キャリア展望を描けない状況もあるとの指摘もある。【P10】
4.×:働きやすい職場環境をつくるべきだと思うかに対して、「そう思う」の割合は、「99 人以下」では11.3%、「100 人~999 人」では17.4%、「1,000 人以上」では42.0%であった。【P58】
問34.カウンセリングの技能
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の大問は第11回問33以来の2度目の出題です。ジル資料に記載がありますが、本問の直接の出典ではなく、参考サイトも紹介しています。
正答:1
1.○:SSTは認知行動療法の一つである。
SSTでは、相手の思いを的確に受けとめる、「聴く」スキルから身につけていく。SSTで身につける主なスキルには聴くスキルのほか、自己主張スキル、対人葛藤処理スキルがある。
適切な自己主張をするスキルや、対人関係からのストレスに対処するスキルを身につける。
SSTは、対人行動の障害やつまずきの原因をソーシャルスキルの欠如として捉え、不適切な行動を修正し、必要なソーシャルスキルを積極的に学習させながら、対人行動の障害等を改善しようとする治療・訓練技法である。【ジルP132】
2.×:クライエントの反応が適切であれば肯定的なフィードバックを行い、不適切であれば修正を加える。【ジルP133】
それにより自己効力感を高めていき、実生活でも応用できるようしていく。
3.×:ソーシャルスキルは繰り返し練習することで身につけることができる。最初から高度な課題を設定するよりも、スモールステップで目標設定するほうが良い。
4.×:SSTは対人行動の障害や躓きを改善するものであり、子供から大人まで年齢と問わず対象としている。【参考サイト:LITALICO仕事ナビ】
問35.カウンセリングの技能
頻出のアイビィのマイクロカウンセリング技法からの出題で、本問は第8回問40とほぼ同じ問題(選択肢4の一部の文言が違う程度)でした。マイクロカウンセリングを日本に導入した、福原先生の著書からの出題です。
正答:3
1.○:かかわり行動には、視線の合わせ方、身体言語、声の調子、言語的追跡のこれら4つのパターンが含まれており、ラポール(信頼関係)を築くうえで非常に重要なものである。【福原先生P6】
2.○:閉ざされた質問とは、「はい」、「いいえ」で答えることができる質問である。
クライエントが尋問されているように感じるため、矢継ぎ早に閉ざされた質問をしないようにする。【福原先生P8】
3.×:この内容は、意味の反映ではなく、クライエント観察技法の説明である。【福原先生P8】
意味の反映は、マイクロカンセリングの階層表では積極技法の手前に位置し、クライエントが無意識のうちに身に付けてきた意味や価値観を持っていることを気づかせ、思考や感情、行動の変化を促していく。【福原先生P12】
4.○:感情の反映では、クライエントの言語化されない感情を、注意深く観察してクライエントの表情などに表れる感情に注意を向けてフィードバックする。【福原先生P9】
参考文献・資料
働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)
新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(PDF)
職場におけるダイバーシティ推進事業報告書(PDF)
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(労働政策研究・研修機構2016年)
マイクロカウンセリング技法福原眞知子著(風間書房2007年)