第23回問01~問05の解き方

第23回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。なお、過去の類題の過去問解説のリンク先の内容は、直近3回分以外はみん合☆プラス会員限定公開です。

問1.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解

【A】今回は満を持しての令和4年版労働経済の分析が初登場、全3問分も出題されました。まずは、データ編の位置づけである、第Ⅰ部からの出題です。

高齢者や女性の活用は、雇用のミスマッチや働き方の工夫の余地があり、「増加の余可能性が有る」と捉えておきましょう。

 令和4年版労働経済の分析

正答:1

1.×:女性や高齢者の労働参加を進める必要がある。

引き続き、 女性や高齢者等の労働参加を進めていくとともに、労働者の主体的な意志に基づく転職などの 外部労働市場を通じた労働力需給の調整が今後更に重要になると考えられる。【P129】

2.○:高品質、高付加価値化の流れの中で、専門性を持った人材やサービス職の人材の労働力需要が高まってきた。【P129】

3.○:特に、介護・福祉分野や IT分野における労働力需要の高まりが予想される。【P129】

4.○:人口減少局面を迎え、当 面、生産年齢人口が減少することが見込まれており、これらの労働力需要に、新規学卒者等による労働力供給の増加のみで対応することは困難である。【P129】

問2.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解

【B】この世論調査からの出題は、前回の第22回問1に続いて2回目ですが、調査のバージョンは、前回の令和3年9月調査から令和4年10月調査へと変化しています。あらかじめ対策をしておくのは困難な問題でしたが、消去法で検討しましょう。

 国民生活に関する世論調査(令和4年10月調査)

正答:3

1.×:「お金を得るために働く」と答えた人の割合は、男性は61.4%、女性は64.9%で、女性の方がやや高いが、「顕著に高い」とはいえない。【P66】

2.×:60~69歳や70歳以上はむしろ割合が低くなる傾向があり、若年層である18~29歳での割合が最も高い。【P66】

世論調査報告書概略版P66より転載

3.○:理想的な仕事として最も割合が高いのは、「収入が安定している仕事(62.8%)」であり、次いで「私生活とバランスがとれる仕事(53.7%)」、「自分にとって楽しい仕事(51.9%)」、「自分の専門知識や能力がいかせる仕事(35.9%)」が続く。【P69】

世論調査報告書概略版P69より転載

4.×:「自由時間をもっと増やしたい(小計)」は41.9%、「収入をもっと増やしたい(小計)」は53.7%で収入派の方が多い。【P72】

問3.キャリアコンサルティングの役割の理解

【B】令和4年版労働経済の分析、第Ⅱ部からの出題です。

こちらは第23回対策総仕上げ模試問2と、3つ選択肢の内容が全く同じでしたから、総仕上げ模試をやっていた方は楽々だったと思われます。お役に立てて、ホッとした一問でした。

文意を捉え間違えてしまうと、選択肢2などは引っかかってしまうかもしれません。今後の出題も予想されますから、キャリアコンサルタントの仕事理解のためにも、よく確認しておきましょう。

 令和4年版労働経済の分析

正答:1

1.○:キャリアコンサルティングを受けた経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般について、「満足している」「おおむね満足している」と感じる者の割合が高くなっている。【P222】

→自己理解を深めた結果、そのように感じる者が多い可能性がある。

2.×:過去にキャリアコンサルティングを受けた経験がある者の方が、転職回数が「0回」である者の割合は低く、「1回」以上である者の割合は高くなっている。【P223】

→転職回数が多いというわけではなく、「1回」以上経験がある、という点に留意する。

3.×:キャリアコンサルティング経験がある者の方が、特定の分野の仕事に限定した職業経験を積むよりも、異分野へのキャリアチェンジを積極的に行う傾向がある。【P224】

→こちらも自己理解などを深めた結果、キャリアチェンジをしやすくなっている可能性がある。

4.×:キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高いことが分かる。

なお、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者では、キャリアコンサルティングを企業外で受けている者の割合が比較的高くなっている。【P225】

→自らの職業能力を他社でいかすことができる可能性について、経験者は気づきを得やすく、それにより転職やキャリアチェンジの実現をしやすくなっている可能性がある。

問4.キャリアに関する理論 

【A】ジェラットの後期理論である、積極的不確実性に関する問題です。前期理論で唱えた「左脳」的な意思決定ばかりではなく、後期理論では「右脳」も使う、夢見ることを大切にする意思決定を提唱しました。予測が困難な世の中ですから…。

正答:1

1.×:積極的不確実性は、今までの合理的な意思決定パラダイムを否定するものではなく、これまでのパラダイムを補完するものである。【渡辺先生P122】

キャリアの理論に関する出題は、渡辺三枝子先生の「新版キャリアの心理学」が出典と思われる出題が多く、木村先生の著書とともに机上に用意しておきたい参考書です。なお、2018年7月に出版された第2版のページ数を表記しています。

新版キャリアの心理学(第2版)

2.○:新しいガイドライン(後期理論:積極的不確実性)では、(思慮深い)想像力、直感、柔軟性が重要になってくる。【渡辺先生P120】

3.○:前期理論の価値システムにおける人間が陥りやすい誤りの一つとしてあげていた、「主観的可能性」を意味していると思われ、意思決定の新たなガイドラインとして提示している。【渡辺先生P120、P114】

4.○:選択肢3と同じく、意思決定の新たなガイドラインとして提示している。【渡辺先生P120】

問5.キャリアに関する理論

【B】「デシ」は、国家試験では初めてですが、直近の2級試験(第30回問7)で出題されており、それを踏まえ、第23回対策総仕上げ模試の問5で出題していました。

デシと言えば「内発的動機づけ」。自分の内側から湧き上がるやる気や、やりがいに着目してアプローチしましょう。

木村先生の著書、キャリアコンサルティング理論と実際(6訂版)にもデシの記載はありますが、内容がまとめられた参考サイトがありますので紹介します。

エドワード・L・デシのモチベーション理論(EARTHSHIP CONSULTING)

正答:3

1.×:内発的動機づけは、内面から湧き出てくる充実感や達成感などの内的報酬によって影響されるモチベーションのことであり、その強さは、幼児期以前に決定しているものではない。

2.×:「他者との関わり」などの関係性は内発的動機づけに影響する。内発的動機づけの源泉には、自律性への欲求、有能感への欲求、関係性への欲求がある。

3.○:試験で頻出の参考書である、キャリアコンサルティング理論と実際(6訂版)では、内発的動機づけは、次のように表現されている。

自分でやりがいをもって働き、困難を克服して目標を達成する内発的動機づけに働きかけることが、職場や組織を活性化し、発展させる。【木村先生⑤記載なし、⑥P225】

キャリアコンサルティング理論と実際

木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上にぜひご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。2022年5月に6訂版が刊行されました。参照ページ数は5訂正版を⑤、6訂版を⑥としています。

4.×:外発的な報酬が与えられると、内発的動機づけが弱まることがある。参考サイトでは、これを「アンダーマイニング効果」と表現している。

やる気を持続するためには、外発的動機づけよりも内発的動機づけ(楽しさや達成感、充実感)が有効である。

参考文献・資料

令和4年版労働経済の分析(PDF)

国民生活に関する世論調査(令和4年10月調査)

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年) 

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