第23回問06~問10の解き方

第23回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!

問6.キャリアに関する理論

【B】ケーススタディ形式での新しいタイプの問題で、支援に用いる理論や手法として適切な内容を問う良問です。多文化キャリアカウンセリング論は、キャリア理論の中でも比較的新しい考え方で、第23回対策総仕上げ模試の問7で取り上げていました。木村先生の著書(6訂版)を中心に確認しましょう。

正答:3

1.×:自己理解を深めたいと相談してきた学生に対しては、例えば、ホランドの理論に基づいたVPI職業興味検査を行うなどのアプローチなどを行う。【渡辺先生P59】

2.×:自己効力感を高めるため、好きな名言や格言を聴くことは最も適切とはいえない。

例えば、バンデューラの社会的学習理論に基づき、これまでに自らが達成してきた行動を振り返ったり(遂行行動の達成)、憧れやモデルになる人について聞いてみる(代理経験)などのアプローチなどを行う。【渡辺先生P136】

3.○:日本に住む外国人、LGBT、貧困層など、社会の中で少数派に対する支援の重要性が近年高まっており、「多文化」、「社会正義」の視点に基づくキャリアカウンセリングについては、木村先生の著書(6訂版)でも大きく取り上げている。【木村先生⑤P40、⑥P93】

母国とは異なる生活習慣・雇用慣行について情報提供を行うことは適切である。

4.×:復職の支援のために、ホランドの6角形を提示して相談に乗ることは、最も適切とはいえない。

例えば、復職に際しての不安や疑問の声を聞いたり、勤務先、行政機関、医療機関、支援機関などの支援内容などの情報収集や確認をしたり、情報提供をするなどして不安な気持ちを取り除きつつ、仕事と治療の両立支援を行う。

問7.キャリアに関する理論

【A】最頻出、スーパーの理論。出題形式が違うものの、第15回問7と類似した問題でした。組み合わせを選ぶのは、比較的易しい問題でした。

正答:2(AとD)

A.○:スーパーは、思春期のキャリア発達の中心的プロセスは「成熟」であり、成人のキャリア発達の基本概念は「アダプタビリティ(適応力)」であるとした。【渡辺先生P48】

B.×:統合的人生設計(ILP:Integrative Life Planning)の理論を構築したのは、ハンセンである。【渡辺先生P208】

C:×:成人の心理社会的発達を、生活構造の安定期(築かれる時期)と過渡期(変わる時期)が交互に現れ進んでいくと考えたのは、成人期を四季にたとえたレヴィンソンである。【岡田先生P78】

働くひとの心理学 

岡田昌毅先生の「働くひとの心理学」は、木村先生や渡辺先生の著書には記述がほとんどない、発達理論に関する記述が充実した参考書です。養成講座のテキストにそれらの記述のある方はマストとまでは言えませんが、キャリア理論全般についても、体系的にまとめられている良書です。

D.○:マキシとは「丈の長い」の意味。成長期、探索期、確立期、維持期、解放(下降、衰退)期の5つの段階である。【渡辺先生P44】

覚え方:せぃ、たかいか?(たかいっすか?)

問8.カウンセリングに関する理論

【B】ゲシュタルト療法(パールズ)に関する大問(選択肢4つ分の問題)は、第14回問30第16回問8以来の3回目。消去法で仲間外れを探しましょう。主要な参考書には記載がないため、参考サイトを紹介します。

カウンセラーウェブ(ゲシュタルト療法の理論と技法

正答:4

1.○:提唱者はパールズ。ゲシュタルトという言葉は、ドイツ語で「統合された全体の構造」を意味している。

2.○:実存主義の「実存」とは、社会的な価値観や評価に左右されずに自分自身の存在自体を認めて、自分らしく生きることを意味している。

今の自分に気づき、体験することを重視するゲシュタルト療法は、「実存主義」をベースにしており、「今ここ」で起こっていることだけを扱うため、「現象学」と位置づけることができる。

3.○:ゲシュタルト療法では、変化させることができない、過去や未来、ここではない場所について問うことはなく、今ここでの気づきを重視する。

4.×:シェーピングは、目標行動をスモールステップに分けて、達成可能な目標からはじめ、段階的に難易度の高い目標行動に取り組んでいく行動療法の技法である。オペラント条件付けをベースとしており、スキナーが開発した。【カウンセラーウェブ

問9.カウンセリングに関する理論

【C】家族療法は、選択肢レベルでの出題は何度かありますが、国家試験ではこれまでに大問での出題はなく、2級の第30回問8で初めて大問としての出題がありました。

なお、その2級の問題は深い内容が問われており、本問の選択肢4の「円環的因果律」に対応する「直線的因果律」に関して出題されています。

そのため、2級の問題を解いていた人は粘り強く検討できたかもしれませんが、これまでにはない、家族療法に関する難問であり、初見では解けなくもやむを得ない問題で、管理人的には第23回の最難問と捉えています。

なお、本問の理解には、下記の参考サイトが役立ちます。

心理学用語集

正答:2

1.○:家族療法では、不適応行動や症状が現れる原因は、その個人にあるのではなく、家族システムに問題があると考える。

このアプローチをシステムズ・アプローチといい、特定個人の人格的変容を促すような手段をとらないのが特徴である。

2.×:「ホメオスタシス」とは、状態を一定の状態に維持する能力、恒常性機能をいう。

「家族ホメオスタシス」とは、家族が一つのまとまりをもったものとして、一定の状態を保つことを意味している。

変化を止めようとする働きのことであるため、システムが一気に崩壊してシステム内の圧力が弱まる現象とは一致しない。

3.○:「二重拘束」とは、「ダブルバインド」ともいい、2つの矛盾した命令を他人にすることで相手の精神にストレスがかかる状態のことをいう。

例えば、(言語的に)「怒らないから話して」と言いながら、(非言語的に)明らかに怒った態度や表情をしているような場合である。

また、(言語的に)「怒らないから話して」と言いながら、その回答によって(言語的に)「どうしてそんなことをしたんだ!」などと怒りのメッセージを言語的に与えることも、二重拘束(ダブルバインド)である。

4.○:家族療法は、家族というシステムの成員間における円環的な関係、「円環的因果律」で捉える。

一方、クライエントの問題は、特定の原因によってもたらされた結果であると、直線的な関係で捉えることを「直線的因果律」と言う。

問10.カウンセリングに関する理論

【A】これまで第9回以来、カウンセリングに関する理論のうち1問は、人名と療法名、キーワードの組み合わせの正誤問題が毎回出題されてきましたが、今回は出題がありませんでした。

選択肢1を選ぶ人もいたのではないかと思います。内容的にはやや注意が必要な問題です。

正答:2

1.×:自己表現が苦手な相談者の場合には、(特に面談の初期においては)「開かれた質問」では何をどこまで答えるべきか、戸惑うことも予想されるため、はい・いいえで答えることができる、「閉ざされた質問」も有効である。

ただし、矢継ぎ早に「閉ざされた質問」をすると、クライエントは尋問されているように感じ、口を閉ざしてしまう可能性があるため、注意が必要である。

2.○:具体的な事実に聞く際の表現として適切である。

3.×:質問は、キャリアコンサルタントが主導権を取って、会話を無駄なく進めるために行うものではない。

4.×:この質問は、「閉ざされた質問」ではなく、「開かれた質問」である。

参考文献・資料

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)

働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)

心理学用語集

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