【技能検定】第31回問01~問05の解き方

第31回キャリアコンサルティング技能検定学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。

問1.社会・経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の認識

【A】この資料は両試験を通じて初めての出題ですが、正誤判断は比較的容易でした。最近の賃金、雇用、就職支援の方向性から正誤判断をしましょう。また、政策パッケージの骨子を把握しておきましょう。

 「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージ(資料1)

この政策パッケージはいわば、アフターコロナの賃金、人材、労働市場の方向性を示しており、次の4つの方向性からなる。

パッケージの4つの柱【P2】

(1)労働者の賃上げを支援する
(2)個人の主体的なキャリア形成を促進する
(3)安心して挑戦できる労働市場を創造する
(4)多様な働き方の選択を力強く支える

正答:4

1.×:賃上げ支援を行う。

コロナ禍における「雇用と暮らしの安定」の実現から、意欲と能力に応じた「多様な働き方」を可能とし、「賃金上昇」の好循環を実現していくため、中長期も見据えた雇用政策に力点を移す。【P1】

2.×:労働移動の円滑化を図る。

賃金上昇を伴う労働移動の円滑化を図る。【P3】

3.×:オンライン相談を活用した在職者のハローワークへの誘導・職業相談を実施する。【P3】

4.○:労働市場の強化・見える化のため、職業情報提供サイト(日本版O-NET)の整備や、職場情報の開示に関するガイドライン(仮称)の策定が施策として挙げられている。【P3】

問2.キャリアコンサルティングの役割の理解

【C】キャリアコンサルティングの企業での導入状況といえば、能力開発基本調査からの出題が度々ありますが、2023年に公表の本資料からの出題は両試験で初めてです。

また、今回の選択肢の正誤判断には大変難しく、初見で正答を導くのは困難な捨て問題でした。正答率は低いと思われますが、この資料の第6章と第7章は目を通しておく必要がありそうです。

 企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題

正答:3

1.×:キャリア相談のしくみについて、全回答企業のうち、正社員では「ある」が 20.3%であるのに対し、正社員以外では「ある」が 11.0%であった。【P114】

2.×:キャリア相談担当者の配置状況については、最も回答が多かったのは、「社内に他業務と兼任のキャリア相談の担当者がいる」(66.3%)であり、大きく差が開いて「社内に専任のキャリア相談の担当者がいる」(10.7%)であった。【P115】

なお、キャリア相談を担当する組織では、「人事部門(特にキャリア支援専門の部署はない)」が最も多かった。【P115】

3.○:キャリア相談担当者に今後期待する業務は選択肢の通り、「利用者へのキャリア面談・相談」、「キャリア支援制度の設計・企画」、「キャリア支援制度の見直し・課題の抽出」の順である。【P118】

なお、キャリア相談担当者の「現在の担当業務」は、「利用者へのキャリア面談・相談」が最も多く、「今後期待する業務」と一致しているが、続いて「キャリア研修の講師等」、「キャリア支援制度の周知」である。【P118】

4.×:正社員におけるキャリア相談の効果は、次の通りである。

1位:労働者の仕事への意欲が高まった(37.9%)
2位:自己啓発する労働者が増えた(33.8%)
3位:新入社員・若年労働者の定着率が向上した(21.0%)

「新入社員・若年労働者の定着率が向上した」よりも、「労働者の仕事への意欲が高まった」の方が割合が高く、1位であることに留意する。【P121】

問3.キャリアに関する理論

【C】社会正義の視点からのキャリア支援を提唱しているブルースティンの問題です。ブルースティンに関する問題は2級第29回問3(選択肢2)で出題がありますが、大問での本格的な出題は初めてです。初見では獲得できなくてもやむを得ませんが、今後に備えて特徴を確認しましょう。木村先生の著書に詳述されています。

ブルースティンは、キャリア支援で最も重要な要因として「社会階層」をあげており、労働者階級や貧困層では特に問題になり、社会階層は「最もパーニシャス(pernicious:致命的、有害)」な影響を与えるとしている。【木村先生⑤記載なし、⑥P99】

正答:1

1.○:貧困その他の社会からの疎外に悩むクライエントは、複数のストレス要因に直面していることが多く、精神的な健康に問題を抱えている。【木村先生⑤記載なし、⑥P100】

木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上にご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。2022年5月に6訂版が刊行されました。参照ページ数は5訂版を⑤、6訂版を⑥としています。

2.×:同じような問題に直面している他の人々を手助けすることは、孤独感や孤立感を軽減するのに役立つ。【木村先生⑤記載なし、⑥P100】

3.×:社会経済的地位の高い若者をアッパー、低い若者をローワーと表現しており、アッパーな若者は従来のキャリア発達理論が対象としてきた層だが、ローワーな若者は「忘れられた半分」であり、その声を重視する必要がある。【木村先生⑤記載なし、⑥P100】

4.×:クライエントに自分が置かれた文脈の要因を自覚させることで、クライエントに力を与え、自責の念を減らし、最適な形で自立性を高めることができる。【木村先生⑤記載なし、⑥P100】

問4.キャリアに関する理論

【A】親の養育態度がパーソナリティに影響を与えるとする、ローの精神分析の視点からのアプローチは、主要参考書に記載がないものの、両試験で度々出題されているので注意しましょう。不適切な選択肢の選択は比較的容易ですので、ポイントを確認しましょう。

正答:2

1.×:①リレーション、②問題把握、③問題解決のステップは、國分康孝のコーヒーカップ・モデルを想起させる。【木村先生⑤P283、⑥P375】

ジェラットといえば、連続的意思決定プロセス(前期理論)や積極的不確実性(後期理論)で知られる。【渡辺先生P111】

キャリアの理論に関する出題は、国家試験と同様に技能検定においても、渡辺三枝子先生の「新版キャリアの心理学」が出典と思われる出題が多いです。木村先生の著書と併せて、机上に用意しておきたい参考書です。表記しているページ数は第2版のページ数です。

2.○:ローは精神分析理論に基づき、パーソナリテイの個人差は、親の養育態度によってもたらされるとし、その態度を情緒型、拒否型、受容型の3つに分けている。【木村先生⑤P28、⑥記載なし※】

※6訂版に記載はないが、拙著「テキスト&問題集」第3版P21で解説している。

3.×:「キャリアの虹」はライフ・キャリア・レインボーを表していると思われるが、8つの心理社会的発達段階というと、エリクソンの個体発達分化の図式(漸成的発達理論)を想起させる。スーパーの理論ではない。【岡田先生P80】

岡田昌毅先生の「働くひとの心理学」は、木村先生や渡辺先生の著書には記述がほとんどない、発達理論に関する記述が充実した参考書です。養成講座のテキストにそれらの記述のある方はマストとまでは言えませんが、キャリア理論全般についても、体系的にまとめられている良書です。

4.×:ホランドのパーソナリティの類型は5類型ではなく、現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的の6類型である(RIASEC)。現実的(R)が加わる。【渡辺先生P41】

問5.キャリアに関する理論

【A】クランボルツに関するオーソドックスな出題です。正誤のポイントを理解しておきましょう。

正答:3

1.×:想定外の出来事がキャリアに影響を及ぼすことは普通のことであり、かつ当然のことであること、そして望ましいことである。【渡辺先生P146】

2.×:未決定を治療すべき問題として捉えるのではなく、用意周到なオープンマインドな状態とみなしなさい。【渡辺先生P146】

計画された偶発性理論では、「未決定」を望ましい状態と考えている。【渡辺先生P145】

3.○:想定外の出来事を利用する方法をクライアントに教えなさい。【渡辺先生P146】

4.×:将来、有益な想定外の出来事が起こりやすくなるように行動をはじめることをクライアントに教えなさい。【渡辺先生P146】

参考文献・資料

「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージ(資料1)(PDF)

企業のキャリア形成支援施策導入における現状と課題(労働政策研究・研修機構2023年)

キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2018年)

新版キャリアの心理学渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)

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