【1級対策】教育指導のまとめ(Part2)
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Part2では学習理論、ブルーム(教育心理学者)の教育目標とタキソノミー(分類)、教育評価(学習評価)を中心にお伝えします。特に教育目標や学習評価の枠組みを作ったブルームの内容は要チェックです。

多様な学習理論

行動的アプローチ
行動的アプローチは、学習と行動の視点から人を捉え、学習が生じる仕組みには、レスポンデント条件付けとオペラント条件付けの二つがある。
レスポンデント条件付けは、古典的条件付けともいい、条件反射に注目した条件付けであり、「パブロフの犬」の実験で知られる。
オペラント条件付けは、道具的条件付けともいい、直接経験による学習に注目した条件付けであり、「スキナーのネズミ」の実験で知られる。学習により行動が増えることを強化といい、行動が減少することを罰(弱化)という。
認知主義的アプローチ
認知主義的アプローチは、学習者の内的なプロセス(思考、記憶、情報処理)に焦点を当てた理論である。認知主義的アプローチでは、知識がどのように記憶され、整理され、利用されるかを探求し、学習者が自ら意味を構成する過程を重視する。
後述するブルームの6段階のタキソノミーは、認知主義的アプローチの視点から思考のレベルを階層化したものである。
社会的学習アプローチ
自らが経験した直接経験による学習だけではなく、他人の行動を観察しそれを真似る、観察学習(モデリング)を重視するアプローチで、バンデューラが提唱した。
他者の行動を観察し、同様の行動を取った際に、どのような報酬や罰があるのかを意識することが、自分自身の行動に影響を与えるとしている。
構成主義的アプローチ
構成主義的アプローチは、学習者が知識を構築していく考え方に基づいており、自らの経験を通じて、知識を作り上げていくと考える。アクティブ・ラーニングの理論的な柱である。
成人(職場)の学習理論
企業で行われる能力開発のためのOJTや、職業体験のインターンシップでは、個人が体験を振り返る(内省する)ことから学ぶ経験学習や、職場という共同体(環境)への参加による関係性の構築から学ぶ、状況的学習がある。
ブルームの教育目標とタキソノミー(分類)
3つの学習領域と教育目標
学習の領域を「あたま、こころ、からだ」の3つに分類し、この3つの領域に基づいた教育目標を立て、3つのバランスをとることの重要性をブルームは提唱している。
【3つの領域】
①【思考】知識を習得し、思考力を高める領域:認知領域
②【感情】興味・関心を持ち、態度や価値観を形成する領域:情意領域
③【行動】身体的な技能やスキルを習得する領域:精神運動領域
これら3つの円が重なり合った中心部分が、学習者のコンピテンシー(特性)となる。

例えば、優れた医師を育成するには、①確かな医学知識を持ち、②患者に寄り添う倫理観や使命感を持ち、③正確な手術の技術や診断技術を習得することが必要となる。
認知領域の6つのタキソノミー
タキソノミーは分類の意味である。3つの学習領域のうち、思考の領域である認知領域については、次の6つの分類、階層で表現している。
認知領域は、記憶→ 理解→ 応用→ 分析 → 評価 → 創造の6つのレベルに分類される。当初は評価までであったが、2001年の改訂版で「創造」が加わった。

この6段階を意識することで、教育や研修の設計がスムーズになる。
例えば、初学者にはレベル1、2の用語を覚え、理解させることを重視し、中級者にはレベル3、4のケーススタディに応用し、分析させることを重視する。そして、上級者には レベル5、6の価値の評価と新しい仕組みを作ることを重視するという設計である。
教育評価
教育評価の意義と種類
教育の目的達成度を測り、指導方法の改善や学習意欲の向上に繋げるため、教育評価を行う。
教育評価には、生徒や学生の学習状況を評価する「学習評価」、授業の質を高めるための「授業評価」、学校全体の運営を改善するための「学校評価」がある。
学習評価
学習評価には、いつ行うか?何を基準に行うか?どのような方法で行うか?の3つの視点がある。
①学習評価の時期
学習評価の時期には、学習前の診断的評価、学習中の形成的評価、学習後の総括的評価がある。これらは前述のブルームが分類した。
・学習前に学習者の特性や事前知識などの状況を把握するために行うのは、診断的評価である。
・学習の途中に、学びの改善やフィードバックなど、学習の質を上げるために行うのは、形成的評価である。
・学習の終了時に、学習の成果や修了判定のために行うのは、総括的評価である。
②学習評価の基準
学習評価の基準には、絶対評価、相対評価、自己基準評価がある。
・他の学習者の成績には影響されず、学習目標に到達しているかどうかで評価を行うのは、絶対評価であり、目標準拠評価とも呼ばれる。
・順位や偏差値など、集団の中での位置で評価を行うのは、相対評価であり、集団準拠評価とも呼ばれる。
・過去の自分との比較により、どのくらい進歩したのかを評価するのは、自己基準評価であり、個人内評価とも呼ばれる。
ルーブリック評価
絶対評価の基準を明確にするための基準表として、ルーブリック評価の活用がある。ルーブリック評価は、評価の観点と達成している段階(レベル)の二軸で評価し、何がどの程度、できているのかを明らかにするものである。

③学習評価の方法
評価の方法には、筆記試験、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価、観察評価がある。
・選択式問題や記述式問題等により知識や理解を測定して評価するのは、筆記試験である。
・プレゼンテーションやロールプレイにより、その場でどのように行動するかを評価するのは、パフォーマンス評価である。
・これまでの学習過程や成果物の蓄積から、成長の軌跡を評価するのは、ポートフォリオ評価である。ポートフォリオには、蓄積や作品集の意味がある。
・評価者が評価対象者の行動や発言、関わりなどを直接観察して評価するのは、観察評価である。
オーセンティック評価
オーセンティックには、本物、正真正銘の意味がある。
学習者が知識をどれだけ暗記しているかではなく、現実社会や実生活に近い場面で、その知識やスキルをどう活用できるかを評価する手法である。評価はプレゼンテーションやロールプレイなどのパフォーマンス評価や、学習の過程や成果物の蓄積による、ポートフォリオ評価が行われる。
学習評価の方法とルーブリック評価の相性
筆記試験の正誤問題、選択問題は、評価基準に客観性があることが通常であるため、特にルーブリック評価の必要性はない。
一方で、論述や小論文などの一部の筆記試験や、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価、観察評価においては、評価者の主観を排除して公平な評価を行うため、観点と段階が整理されているルーブリック評価との相性が良い。それによりフィードバックも行いやすくなる。
Part2の内容は次の過去問で出題されています。
第9回問30 第9回問31 第10回問30 第11回問30 第12回問30 第14回問31
※第9回問31と第14回問31はどちらも同じ出題内容です(選択肢の順序が少し違う)。
Part2の内容は以上です。このページで紹介している画像を配布しています。個人的な利用の範囲内で用語の内容確認にご活用ください。