【技能検定】第31回問06~問10の解き方
第31回キャリアコンサルティング技能検定学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。
問6.キャリアに関する理論
【A】理論家とその特徴、キーワードを整理できる良問です。
正答:4
1.×:8つのキャリア・アンカーといえば、シュロスバーグではなくシャイン。8つのキャリア・アンカーの内容は適切である。【渡辺先生P160】
覚え方:せんぜん じぶんは ほうきをもって ほうしした じんせい
(専門・職種別コンピテンス、全般管理コンピテンス、自律/独立、保障/安定、奉仕/社会献身、起業家的創造性、純粋な挑戦、生活様式)
2.×:偶然の出来事を生かすためのスキルといえば、シャインではなくクランボルツ。5つのスキルの内容は適切である。【ジル資料P47】
覚え方:こうじくん 柔軟に 楽しく 冒険
(好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心)
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査
3.×:キャリアアダプタビリティの4次元といえば、クランボルツではなくサビカス。4つの次元の内容は適切である。
覚え方:かとうこうじ(関心、統制、好奇心、自信)
4.○:バンデューラの唱える、モデリング(観察学習)の4過程として適切である。
具体的に表現をすると、以下のプロセスである。
注意深く観察する→それをイメージや言語として保持する→真似をしてみる→それを実際に遂行するかを決める。
覚え方:ちゅうほ うんどう
(注意過程、保持過程、運動再生過程、動機づけ過程)
問7.キャリアに関する理論
【B】シャインが提唱する組織の3次元モデル(キャリアコーン)に関する出題です。組織の3次元モデル(キャリアコーン)は「外的キャリア」を示しています。この問題で理解を深めましょう。なお、国家試験第14回問9に類題が出題されています。
正答:3
1.×:円あるいは核へ向かう動きは、「部内者化」つまり、メンバーシップの次元に沿い、組織の核へ向かう移動である。【渡辺先生P157】
職能の移動は例えば、人事部から営業部への職能(専門領域)の移動を表す。
2.×:水平的(横断的)キャリア成長は販売↔マーケティング↔研究開発など職能の拡大を表している。【渡辺先生P158】
3.○:垂直的次元は一般社員層→管理職層→経営層といった階層次元を表す。
組織の中心へ向かう部内者化は、垂直的次元での成長が行き止まったとしても可能である。例えば、特定の職の部門で長く職務に就くことによって、その職のエキスパートになるような場合である。
つまり、地位・機能が同一のまま、組織にとっての自己の重要性が変化することが部内者化である。【ジル資料P71】
4.×:組織の中心へ向かう移動は、重要な情報にアクセスしやすい位置への移動であり、これが部内者化である。【ジル資料P71】
問8.カウンセリングに関する理論
【B】ゲシュタルト療法はパールズが始めた療法で、「今ここ」での「気づき」を得る心理療法で、代表的な技法に「エンプティチェア」があります。類題は国家試験第14回問30で出題があります。
正答:2
1.×:これは認知療法などの認知的アプローチの考え方である。【ジル資料P129】
2.○:ゲシュタルト療法は、精神分析療法のように変えることが出来ない過去について問うのではなく、行動により変化させることができる「いま、ここ」での気づきを重視する。【参考サイト:カウンセラーウェブ(ゲシュタルト療法の理論と技法)】
3.×:三項随伴性の出題は両試験を通じて初めて。三項随伴性は、「先行刺激」→「行動」→「行動の結果」の関係性のことをいう。【ジル資料P124】
たとえば、電話のベルが鳴る(先行刺激)→受話器を取る(行動)→好きな人からの電話/嫌いな人からの電話(結果)の三項の関係性のことを、三項随伴性という。
この三項随伴性において、結果が好きな人との楽しい会話であれば、次にベルが鳴ったときにすぐに受話器を取りますが(強化)、嫌いな人との不愉快な会話をすると、次にペルが鳴ったときに受話器を取りづらくなるでしょう(弱化)。
つまり、このアセスメントを行うこと(行動分析)をすることによって、スキナーが提唱した、行動療法のオペラント条件づけを利用した治療や支援をすることができる。【参考サイト:ダイコミュコミュニケーション能力辞典】
4.×:これらは家族療法の代表的な技法である。
リフレーミングは、視点のフレーム(枠組み)を変えることであり、否定的な見方を肯定的な見方に変えるなど意味付けを変える方法である。
また、ジョイニング(joining)はカウンセラーが家族に加わり交流する方法である。【参考サイト:心理学用語の学習】
問9.カウンセリングに関する理論
【B】「治療的人格変化の必要にして十分な条件」は、ロジャーズが提唱する、クライエントのパーソナリティ変容のための6つの条件のことをいい、2級第22回問38で大問が出題されています。また、類題は国家第8回問28で出題されています。
主要参考書には記載がないため、6つの条件を紹介します。
1.2人の人間が心理的な接触を持っていること
2.第1の人(クライエント)は不一致の状態、傷つきやすい状態、または不安な状態にあること
3.第2の人(セラピスト)はその関係の中で一致している状態、統合している状態であること
4.セラピストはクライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること
5.セラピストはクライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をクライエントに伝えようと務めていること
6.セラピストの理解と無条件の肯定的配慮が、最大限、クライエントに伝わっていること
正答:4
1.×:第一の条件は、「2人の人間が心理的な接触を持っていること」である。必要にして十分な条件のなかで、特に「傾聴」自体には触れていない。
2.×:カウンセラーの態度の三条件は、受容的態度、共感的理解、自己一致である。上記でいえば、3の自己一致、4、6の無条件の肯定的配慮、5の共感的理解である。【木村先生⑤P43、⑥P110】
3.×:伝わっていることまでを含めている。「6.セラピストの理解と無条件の肯定的配慮が、最大限、クライエントに伝わっていること」。
4.○:クライエントとの関係において、カウンセラーが心理的に安定しており、ありのままの自分を受容していることは、自己一致、純粋性という言葉によって表現される。【木村先生⑤P43、⑥P110】
問10.職業能力開発(リカレント教育を含む)の知識
【A】消滅してしまう制度の出題に驚きましたが、ジョブ・カード作成アドバイザーになるためのジョブ・カード講習は、平成30年度を持って終了しました。
また、講習修了者に交付されていたジョブ・カード作成アドバイザー証の有効期限は、2024年3月31日をもって全員終了し、その役割はキャリアコンサルタントが担っています。【厚生労働省】
正答:2
1.×:本人の偽証について、ジョブ・カード作成アドバイザーの責任が問われることはない。
2.○:ジョブ・カードの管理は本人が行う。
3.×:ジョブ・カードの作成支援は、キャリアコンサルタントやジョブ・カード作成アドバイザーが行う。
4.×:類題が過去にも出題されているが、ジョブ・カードを作成(記入)するのは本人である。代筆はしない。
参考文献・資料
新版キャリアの心理学渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)
厚生労働省