動機づけ理論(職務満足・職業適応)のまとめ
Check Sheet機能をご活用ください。
キャリアに関する理論から、動機づけ理論(職務満足・職業適応)のまとめです。理論家、学者ごとにその特徴やキーワードをまとめています。
(2024年1月改訂:デシの理論、マズロー、アルダファ、マクレランドの比較表を追加しました。)
マズローの理論
マズローは、人間は自己実現に向かって絶えず成長していくとの人間観に立ち、人間の欲求を低い次元から高い次元へと5つの段階に分類する欲求階層説を提唱した。
この5段階について、低次の欲求が満たされると、高次の欲求を満たそうとする心理的な欲求、モチベーションが生じるとしている。
マズローの5段階欲求の内容は次のとおりである。
欲求の段階 | 内容 |
生理的欲求 | 生命の維持に必要な、睡眠、休息、食欲、性欲などの欲求 |
安全の欲求 | 住まいや衣服、雇用が確保され、安全、安心に対する欲求 |
所属と愛情の欲求 | 社会的欲求とも呼ばれ、社会の一員として認められることや、人から愛されたいという欲求 |
自尊と承認の欲求 | 単に承認欲求とも呼ばれ、名声や権威、地位を得たい、人から認められたいという欲求 |
自己実現の欲求 | 自らの持つ可能性を実現して、個人としての個性や能力を発揮したいという欲求で、マズローの欲求階層説の中核的概念。 |
覚え方:生まれ安い所に辞書が実る
自己実現の欲求以外は、欠乏欲求に分類され、自己実現の欲求は成長欲求に分類される。
【参考文献:岡田先生P23】
アルダファの理論
アルダファは、仕事の場面を中心とした研究により、マズローの欲求階層説を修正し、ERGモデルを提唱した。
EはExistenceの存在欲求、RはRelatednessの関係欲求、GはGrowthの成長欲求である。
人間には欠乏欲求と成長欲求があるとしているのは、マズローと共通している。
しかし、各欲求は連続的であり、高次と低次の欲求が同時に生じることがあるとしており、この点はマズローとは異なる点である。
【参考文献:岡田先生P26】
マクレランドの理論
マクレランドは、職場での社会的欲求が動機づけを高めると考え、達成動機理論を提唱した。
マクレランドの社会的欲求には、親和欲求、権力(支配)欲求、達成欲求があり、それぞれは、マズローの所属と愛情の欲求、自尊と承認の欲求、自己実現の欲求に対応している。
ただし、達成動機が強すぎる場合には、自己実現を阻害するとも指摘している。
【参考文献:岡田先生P27】
マズローの影響を受けたアルダファとマクレランドの比較
参考資料によって、多少その範囲が異なるようですが、マズローと比較して、次のような相違があります。
【岡田先生P26、図1-2欲求モデルの比較(田尾、1991)を元に作図】
アルダファのERGモデルは、存在、関係、成長欲求の3つの次元から構成されているが、マズローのように下位から順に欲求が満たされるのではなく、高次と低次の欲求が同時に満たされることもあるとしている。
また、マクレランドは、社会的欲求が動機づけを高めるとし、達成動機理論を提唱した。
ハーズバーグの理論
ハーズバーグは、職務満足もしくは不満足を規定する要因には、動機づけ要因と衛生要因の2つがあるとした(2要因説)。
前者は、仕事の達成感や責任、承認、昇進、成長であり、後者は、会社の施策、給与等も含む作業条件等である。
衛生要因の改善により、人の不満足を減少させることはできるが、職務満足は動機づけ要因の充足により、はじめてもたらされるとした。
【参考文献:岡田先生P26、木村先生P60】
デシの理論
デシは、動機づけには内発的動機づけと外発的動機づけの2種類があるとした。
内発的動機づけは、自らの内面から湧き上がる興味、好奇心、関心などの欲求による動機づけである。一方、外発的動機づけは、報酬や罰などによる動機づけである。
そして、デシは内発的動機づけが高まる要素として、自律性、有能感、関係性の欲求の3つをあげている。これは、認知的評価理論と呼ばれている。
自律性:自ら主体的に動きたいという欲求
有能感:能力があると感じたいという欲求
関係性:他者と相互に尊重し合える環境をつくりたいという欲求
なお、報酬や罰による外発的動機づけの効果は一時的であるものが多く、長期的な行動の持続には、内発的動機づけが必要である。
また、内発的動機づけに基づいた行動であっても、報酬が与えられるようになると、内発的動機づけが減退する、アンダーマイニング効果があるとされている。
例えば、子供の頃に最初は自主的に行っていた家事の手伝い(内発的動機づけによる)が、途中から小遣いが与えられるようになり、いつしか、それが当たり前のように、期待するようになった場合である(外発的動機づけ)。
例えば、もう中学生なのだから、と小遣いが与えられなくなると、家事の手伝いへの動機づけが低下することがある。
参考サイト:EARTHSHIP CONSULTING
マクレガーの理論
マクレガーは動機づけに関わる人間観として、X理論とY理論の対立的な理論を提唱した。
人はそもそも怠け者で、強制されたり命令されたり、罰が無いと行動しないという前提に立つのがX理論であり、その場合の企業と個人との関係は従属的になる。
それに対し、魅力のある目標と責任の機会を与えることにより、積極的に行動をしていくという前提に立つのがY理論であり、その場合の企業と個人の関係はWin-Winで協力的になる。
覚え方:罰(X:バツ)理論とYes(Y)理論を蒔くれがぁ。
ヨコ解きリンク
第10回問7 第15回問8 第19回問7 第23回問5 2級第22回問8
デシの大問は第23回(問5)で出題されています。なお、マクレガーは選択肢で一度出題されたのみです。(2級第28回問6)
参考文献・資料
働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周著(雇用問題調査会2022年)
問題編のご案内
対応する問題編(みん合☆プラス会員限定公開)で早速、知識を固めましょう(全9問)。