動機づけ理論【まとめ編】
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キャリアに関する理論から、動機づけ理論(職務満足・職業適応)のまとめです。理論家、学者ごとにその特徴やキーワードをまとめています。(2024年8月改訂)
動機づけ年表
年表にしてみると、マズローが圧倒的に先駆者で、しばらく月日は流れ、その影響を受けたマクレガーはX理論とY理論を提唱します。また、マクレランドやアルダファが欲求階層をアレンジします。そして、ハーズバーグが動機づけ理論を明らかにしてからは、デシの内発的動機づけの研究、そして、それを作り出す職務特性モデルの研究へと繋がっているようです。
マズローの理論
マズローは、人間は自己実現に向かって絶えず成長していくとの人間観に立ち、人間の欲求を低い次元から高い次元へと5つの段階に分類する欲求階層説を提唱した。
この5段階について、低次の欲求が満たされると、高次の欲求を満たそうとする心理的な欲求、モチベーションが生じるとしている。
なお、上位の欲求は下位の欲求が充足されて初めて発生すると考え(欲求の不可逆性)、第1層の生理的欲求から第4層の自尊と承認の欲求までを欠乏欲求に分類し、第5層の自己実現の欲求は成長欲求に分類している。
マズローの5段階欲求の内容は次のとおりである。
欲求の段階 | 内容 |
生理的欲求 | 生命の維持に必要な、睡眠、休息、食欲などの欲求 |
安全の欲求 | 住まいや衣服、雇用が確保され、安全、安心に対する欲求 |
所属と愛情の欲求 | 社会的欲求とも呼ばれ、社会の一員として認められることや、人から愛されたいという欲求 |
自尊と承認の欲求 | 承認欲求とも呼ばれ、名声や権威、地位を得たい、人から認められたいという欲求 |
自己実現の欲求 | 自らの持つ可能性を実現して、個人としての個性や能力を発揮したいという欲求で、マズローの欲求階層説の中核的概念。 |
覚え方:生まれ安い所に辞書が実る
【参考文献:岡田先生P23】
マクレガーの理論
マクレガーは動機づけに関わる人間観として、X理論とY理論の対立的な理論を提唱した。
▼マズローとマクレガーの理論の関連
人はそもそも怠け者で、強制されたり命令されたり、罰が無いと行動しないという前提に立つのがX理論であり、その場合の企業と個人との関係は従属的になる。
マズローの5段階との対応では、X理論は生理的欲求、安全の欲求が満たされておらず、それを求めている場合のアプローチとして考えられる。
それに対し、魅力のある目標と責任の機会を与えることにより、積極的に行動をしていくという前提に立つのがY理論であり、その場合の企業と個人の関係はWin-Winで協力的になる。
マズローの5段階では、Y理論は自尊と承認の欲求や自己実現の欲求がある場合のアプローチに相応しい。
覚え方:罰(X:バツ)理論とYes(Y)理論を蒔く(れがー)
マクレランドの理論
マクレランドは、職場での社会的欲求が動機づけを高めると考え、達成動機理論を提唱した。
▼マズローとマクレランドの比較
マクレランドの社会的欲求には、親和欲求、権力(支配)欲求、達成欲求があり、それぞれは、マズローの所属と愛情の欲求、自尊と承認の欲求、自己実現の欲求に対応している。
また、◯◯欲求ではなく、〇〇動機の字が当てられることも多く、達成動機が強すぎる場合には、自己実現を阻害するとも指摘している。
【参考文献:岡田先生P27】
覚え方:達成しまくれランド🎡
アルダファの理論
アルダファは、仕事の場面を中心とした研究により、マズローの欲求階層説を修正し、3階層からなる、ERGモデルを提唱した。
EはExistenceの存在欲求、RはRelatednessの関係欲求、GはGrowthの成長欲求である。
▼マズローとアルダファの比較
人間には欠乏欲求と成長欲求があるとしているのは、マズローと共通している。
しかし、各欲求の満足には可逆性があり、低次欲求の満足は高次欲求の必要条件ではない。また、高次と低次の欲求が同時に生じることがあるとしており、この点はマズローとは異なる点である。
【参考文献:岡田先生P26】
覚え方:存在欲求が「在るだファ」、ERGだわ(だファ)!
ハーズバーグの理論
ハーズバーグは、職務満足もしくは不満足を規定する要因には、動機づけ要因と衛生要因の2つがあるとした(2要因説)。
種類 | 具体的な要因 |
動機づけ要因 | 達成感、承認、興味、責任と権限、昇進や成長 |
衛生要因 | 給与、福利厚生、経営理念や方針、同僚や上司との関係 |
衛生要因の改善は人の不満足を減少させるが、職務満足は動機づけ要因の充足によって初めてもたらされる。
▼マズローとハーズバーグの理論の関連
【参考文献:岡田先生P26、木村先生P60】
【まとめ】マズローの影響を受けた各理論家の比較
資料により若干範囲が異なるが、マズローと比較するとこのような特徴がある。
デシの理論
デシは、動機づけには内発的動機づけと外発的動機づけの2種類があるとした。
■動機づけの種類と要因
動機づけの種類 | 動機づけの要因 |
内発的動機づけ | 充実感・達成感・成長実感などの内的報酬による動機づけ |
外発的動機づけ | 給料・地位・評価などの外的報酬による動機づけ |
そして、デシは内発的動機づけが高まる要素として、自律性、有能感、関係性の欲求の3つをあげている。
■内発的動機づけが高まる要素
欲求の種類 | 内容 |
自律性:autonomy | 自分で決めて、主体的に動きたい |
有能性:competency | 自分は出来る、能力があると感じたい |
関係性:relatedness | 他人と尊重し合える環境をつくりたい |
これらを感じたときに内発的動機づけが高まるとし、これを認知的評価理論と名付けている。
なお、報酬や罰による外発的動機づけの効果は一時的であるものが多く、長期的な行動の持続には、内発的動機づけが必要である。
また、内発的動機づけに基づいた行動であっても、報酬が与えられるようになると、内発的動機づけが減退する、アンダーマイニング効果を紹介している。
■アンダーマイニング効果とは…。
例えば、子供の頃に最初は自主的に行っていた家事の手伝い(内発的動機づけによる)が、途中から小遣いが与えられるようになり、いつしか、それが当たり前のように、期待するようになった場合である(外発的動機づけ)。
そして、もう中学生なのだから、と小遣いが与えられなくなると、家事の手伝いへの動機づけが低下することがある。
参考サイト:EARTHSHIP CONSULTING
ハックマンとオルダム
ハックマンとオルダムは、職務属性と職務満足の関係を、職務特性モデルとして理論化し、取り組む仕事の特性によって、内発的動機づけが高まると考えた。
以下の5つの職務の中核的次元が満たされると、モチベーションを左右する重要な心理状態を満たすことができ、その結果、成果があらわれる。
職務の中核的次元 | 重要な心理状態 | 成果 |
スキルの多様性 (多様なスキルや才能を活かす) |
仕事の有意味感 |
職務満足 |
課業の主体性 (全体を理解した上での関わり) |
||
課業の重要性 (生活や社会へのインパクト) |
||
自律性 (計画実施における自由度の高さ) |
成果に対する責任 | |
フィードバック(結果の確認) | 仕事の把握感 |
木村先生⑥P226の文章を元に作表
そして、ハックマンとオルダムは、モチベーションが引き出されるスコア(MPS)について、算式化している。
MPS(Motivation Potential Score)は、5つの中核的次元を掛け合わせることで、人のやる気に差が生じることを表現している。
MPS(Motivation Potential Score)の図式▼
モチベーションの水準=
参考サイト:EARTHSHIP CONSULTING
ヨコ解きリンク
第10回問7 第15回問8 第19回問7 第23回問5 第26回問6 2級第22回問8
デシの大問は第23回(問5)で出題されています。なお、マクレガーは選択肢で一度出題されたのみです。(2級第28回問6)
参考文献・資料
働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周著(雇用問題調査会2022年)
個と組織を生かすキャリア発達の心理学二村英幸著(金子書房2015年)
問題のご案内
合格問題集P84(問題27)、P86(問題29)
対応する問題編(みん合☆プラス会員限定公開)で早速、知識を固めましょう(全15問)。